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「ATR-X症候群」による重度知的障がいに有効な治療薬候補を発見-東北大

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2018年05月24日 PM12:30

日本でも年間約10名の患者が発症する難病、

東北大学は5月22日、重度知的障がいをきたす指定難病のひとつである「ATR-X症候群」の治療薬候補を世界で初めて発見したと発表した。この研究は、同大学大学院薬学研究科の福永浩司教授、岐阜薬科大学の塩田倫史准教授、京都大学大学院医学研究科の和田敬仁准教授らの研究グループによるもの。研究成果は英国学術誌「Nature Medicine」(電子版)に掲載されている。


画像はリリースより

ATR-X症候群(X連鎖αサラセミア知的障がい症候群)は男性で発症し、・運動発達の遅れを特徴とした難病。発症頻度は出生男児5~7万人に1例、日本国内では年間10名前後の患者が発症していると推定されている。ATR-X症候群では、ATRXタンパク質が上手く機能しないため、複数の遺伝子が正常に働かなくなり、さまざまな症状を呈すると考えられている。

」がモデルマウスの知的障がいに有効

研究グループは、ATR-X症候群でみられる知的障がいに有効な治療薬の探索を実施。その結果、既に市場で安全性に関する情報が整備されている既存薬「5-アミノレブリン酸」が、今まで知られていない薬理作用によりATR-X症候群モデルマウスの知的障がいに有効であることを発見した。

ヒトの遺伝情報(ヒトゲノム)を司るDNAには、繰り返し配列により遺伝子の働きに重要と考えられている「」と呼ばれる特殊なDNA構造の場所が多数存在する。ATRXタンパク質はこの「」に結合し、遺伝子が正常に働くように調節する。5-アミノレブリン酸を服用すると、体内でグアニン四重鎖に作用する物質であるポルフィリンが産生され、ATRXタンパク質の機能を補うことができることが判明したという。

また、グアニン四重鎖は近年、C9ORF72遺伝子のもつGGGGCCリピート配列の異常伸長による家族性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、さまざまな難治性神経疾患の病態においても注目されている。今回の発見は、こうした他の難病の新しい創薬標的の可能性にも寄与することが期待できる、と研究グループは述べている。

 

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