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iPS細胞由来免疫抑制細胞の投与で、移植時の拒絶反応を抑制-北大

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2015年09月18日 AM06:00

iPS細胞を用いた移植医療における免疫制御法を提案

北海道大学は9月15日、同大学遺伝子病制御研究所免疫生物分野の清野研一郎教授と医学研究科腎泌尿器外科学分野の篠原信雄教授らの研究グループが、iPS細胞から分化誘導した免疫抑制細胞により、拒絶反応を抑えることに成功したと発表した。

ES細胞やiPS細胞等の多能性幹細胞は、さまざまな種類の細胞に分化することのできる細胞であり、再生医療への応用が期待されている。他人の臓器や細胞を移植すると、免疫の働きにより拒絶反応が生じ体内から排除されてしまうため、免疫系の制御が非常に重要であり、同じことが多能性幹細胞から作り出した細胞や組織を移植する場合にも当てはまる。

研究グループは、多能性幹細胞由来の細胞や組織を移植片として用いるような、これからの時代の再生医療にふさわしい新しい免疫制御法を考案。多能性幹細胞から再生医療用の細胞と拒絶反応を抑えるための免疫抑制細胞の両方を作り、免疫抑制細胞で被移植者を処置することにより拒絶反応を抑制するという。

移植片の生着期間が有意に延長することを確認

研究グループは、マウスiPS 細胞から免疫抑制細胞を分化誘導する方法を新規に確立。また移植実験を行うにあたり、同iPS細胞から胚様体と心筋様細胞を分化誘導し、再生医療用細胞(移植片)のモデルとして準備。移植を受けるC3HマウスにiPS細胞から誘導した免疫抑制細胞を注射した後に移植片を移植する群、免疫抑制細胞を注射せずに移植片を移植する群とで、その生着期間(移植片が体内に留まる期間)を比較検討した。

その結果、免疫抑制細胞を投与しなかった場合に比べ、移植片の生着期間が有意に延長することが判明。また、このiPS細胞由来免疫抑制細胞の投与を受けたマウスの血液を調べたところ、移植片に対する抗体の産生が減弱していることがわかったという。これらの結果から、iPS細胞由来移植片の移植に際し、同iPS細胞由来免疫抑制性細胞の投与により拒絶反応を抑制しうることが明らかになった。

この成果により、iPS細胞から移植片を作製すると同時に、免疫制御細胞も作製して拒絶反応を抑制するというコンセプトの有用性が示された。他者由来iPS細胞を用いる新時代の移植医療、再生医療への応用が期待される。

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北海道大学 プレスリリース

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