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恐怖記憶に、ニューロンで広く発現するSeptin-5が関与していると判明-東邦大ほか

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2025年12月02日 AM09:20

Septin-5の機能を形態学・行動学の両面から検証

東邦大学は11月13日、細胞骨格タンパク質セプチン5(Septin-5)が欠けたマウスは、恐怖条件付け文脈記憶が障害されることを発見したと発表した。この研究は、同大理学部生物分子科学科の上田(石原)奈津実准教授、滋賀県立総合病院臨床研究センターの谷垣健二専門研究員、University of Texas Health Science Center at San Antonioの廣井昇教授、福井大学医学部の深澤有吾教授、藤田医科大学の宮川剛教授、富山大学学術研究部医学系の高雄啓三教授、名古屋大学大学院理学研究科の木下専教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Molecular Brain」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

セプチン細胞骨格は、アクチン、微小管、中間径フィラメントに次ぐ第4の細胞骨格として位置づけられ、Septin-5はその中でも成熟ニューロンに高発現するサブユニットである。今回の研究では、Septin-5の機能を形態学・行動学の両面から検証した。

Septin5欠損マウス、シナプス超微細構造や滑面小胞体含有スパイン割合は野生型と同等

研究グループは、C57BL/6N系統のSeptin5欠損マウスと野生型マウスを用い、海馬歯状回、CA3、CA1の連続した超薄切片を用いた電子顕微鏡観察を行った。

その結果、シナプス密度、スパイン体積、シナプス後肥厚面積に差はなく、滑面小胞体を含むスパインの割合も変化しなかった。

新奇物体認識・音手がかり恐怖は野生型と同等、文脈記憶のみ障害

行動試験では、(1)新奇物体認識(1日後)は野生型と同等、(2)恐怖文脈条件付けにおける文脈テストでは1日後および1か月後の凍結行動が有意に低下、(3)手がかり恐怖(別のテスト空間における音提示)では1日後・1か月後ともに野生型と同等、という選択的な障害パターンが認められた。また、フットショック反応やフットショック前後の移動距離、明暗箱での不安様行動指標に顕著な群差はみられなかった。

これらの結果から、ショック知覚、基礎的運動や不安様行動の差が、恐怖文脈条件付けにおける、訓練1日後と1か月後の文脈テストでのSeptin5欠損マウスの凍結行動低下の主因とは考えにくいことがわかった。

以上の結果から、Septin-5の欠損は海馬の超微細構造の顕著な改変を伴わずに、最近・遠隔両方の段階での恐怖条件付け文脈記憶の持続的な低下をもたらすことが示された。

「恐怖記憶」の仕組み理解に資する基礎的知見

恐怖条件付け文脈記憶は、動物が危険を予測する学習現象として神経科学研究で広く用いられており、外傷後ストレス障害(PTSD)などの恐怖記憶の研究でも用いられている。「本研究は恐怖記憶の仕組みの理解に資する基礎的知見と言える」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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