医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > レントゲン画像判定AIモデル開発、部位・撮影方法を高精度で識別-大阪公立大

レントゲン画像判定AIモデル開発、部位・撮影方法を高精度で識別-大阪公立大

読了時間:約 1分57秒
2025年11月28日 AM09:30

大規模データセットにおける「ラベルの誤り」、自動点検の仕組み構築へ

大阪公立大学は11月11日、レントゲン画像を各部位(頭部や腹部など)に分類するAIモデルと、胸部レントゲン画像の撮影方法と画像の向きを同時に判定するAIモデルを開発し、いずれも高精度な判定性能を示したと発表した。この研究は同大大学院医学研究科放射線診断学・IVR学の光山容仁大学院生(博士後期課程4年)、人工知能学の植田大樹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Radiology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

病院で撮影されるレントゲン画像には、「撮影部位(胸部や腹部など)や撮影方法(前から/後ろから/横から)、画像の向き(上・下・左・右)」などの情報がラベルとして付与される。このラベルは、診断支援やAIによる画像解析において重要な役割を果たす。しかし、このラベルを付与する作業の多くは、人による入力に頼っているため、誤りが混ざることがある。特に大規模な画像データセットになるほどラベルの確認作業が難しくなり、AIの学習や臨床での判断の妨げになる。過去にもラベルの自動判定に関する研究は行われているが、単一施設や小規模データに限られることが多く、他の病院でも同様の精度が得られるかという一般性が課題となっている。

今回の研究では、複数の病院の画像データと公開データを組み合わせて、ラベルの正しさを自動で点検できる仕組みの構築を目指した。

大規模画像データを用い2種のAIモデル開発、高い判定性能を示す

今回の研究では、2種類のAIモデルを開発した。1つ目は、レントゲン画像を各部位(胸部や腹部など)に分類するモデルである。2つ目は、胸部レントゲン画像のみを対象に、撮影方法と画像の向きを同時に判定するモデルである。これらのモデルの学習には、部位分類で約43万枚、胸部の撮影方法と画像の向きの判定で約46万枚という大規模な画像データを使用した。データは、学習用・調整用・テスト用に分け、さらに別の病院の画像でもテストを行い、性能を検証した。

結果、部位分類モデルでは、すべてのクラスでAUC0.99以上という高い精度を示した。さらに、胸部の撮影方法と画像の向きの判定では、いずれもAUCが1.00と、極めて高い判定性能を示した。

再撮影や見直しの手間を削減、研究の信頼性も向上へ

今回開発したAIモデルは、大規模な画像データベースの品質管理の効率化につながると期待される。

「実際に、研究で使用したデータを見直したところ、3~12%の画像においてラベルの修正が必要だった。このような誤りをAIが先に知らせてくれれば、そこだけ重点的に確認でき、再撮影や見直しの手間を減らすことができる。さらに、AIの学習データの混入エラーも早期に見つけられるため、研究の信頼性も向上する。このAIモデルは、誰でも使えるレントゲン画像判定アプリに活用され、すでに一般公開されている。今後は分類が難しい画像への工夫や、施設ごとの条件の違いへの対応強化を進め、より安全で効率的な医用画像の活用につなげたい」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 筋トレ前の高カカオチョコレート摂取、動脈スティフネス低下に有効-明治ほか
  • 子どもの希死念慮・自殺企図増加、神経症やせ症も増加で高止まり-成育医療センター
  • アルツハイマー病、腸内細菌叢が発症に関与の可能性-都長寿研
  • ATTRアミロイドーシス、ザクロ由来成分にアミロイド線維分解効果を発見-熊本大
  • 新規CETP阻害薬Obicetrapib、LDL-C値を有意に低下-大阪医薬大ほか