自治体の介護予防プログラムの多く、認知症予防の十分なエビデンスを備えておらず
国立長寿医療研究センターは11月4日、認知症予防を目的としたプログラムの効果を検証したJ-MINT研究の成果に基づき、市町村など地域で導入可能な、認知症予防を目的としたプログラム「地域版J-MINT Brain Healthプログラム」を新たに開発したと発表した。この研究は、国立長寿医療研究センターによるもの。

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日本では急速な高齢化に伴い、認知症や軽度認知障害(MCI)の有病率が今後ますます増加すると推計されている。こうした背景を踏まえ、2024年(令和6年)12月に厚生労働省は「認知症施策推進基本計画」を策定し、その柱の一つとして、科学的根拠(エビデンス)に基づいた認知症予防活動の推進を掲げている。現在、全国の自治体においてさまざまな介護予防プログラムが展開されているが、その多くは認知症予防に関する十分なエビデンスを備えていないのが現状である。
認知症予防プログラム、知識や生活習慣を体系的に学び生活での実践に結び付ける
この課題に対応するため、MCIを有する人を対象として認知症予防を目的とした多因子介入プログラムの効果を検証したJ-MINT研究の成果に基づき、自治体の一般介護予防事業として活用可能な新たなプログラム「地域版J-MINT Brain Healthプログラム」を開発した。同プログラムは、1回90分、週1回のペースで全24回にわたり実施する教室型のプログラムである。各回はおよそ20人の参加者を対象に、インストラクターが指導を行う。参加者は、運動や食事、社会活動など、認知症予防に役立つ知識や生活習慣を体系的に学び、自身の生活の中で実践に結び付けることができる。
認知機能へのプログラムの効果をクラスターランダム化比較試験で検証、2026年4月から
今回の研究の目的は、地域版J-MINT Brain Healthプログラムが認知機能に与える効果を、クラスターランダム化比較試験により検証することである。全国の自治体で、60~80歳の高齢者を対象に、高血圧または高血糖の基準に該当し、主観的および軽度認知機能低下を有する人を各20~40人募集し、1年間にわたりプログラムを提供する。研究デザイン上、参加自治体はランダムに前半群と後半群に割付られ、前半の自治体では2026年(令和8年)4月から2027年(令和9年)3月まで、後半の自治体では2027年(令和9年)4月から2028年(令和10年)3月まで、順次プログラムを提供する。さらに、1年間のプログラム終了後に、参加者自身が教室運営に関わる「継続教室」を取り入れ、地域に根付いた持続的な取り組みへと発展させていくことも予定している。また、同研究では、7月15日のプレスリリースにある事業認定制度やインストラクター育成制度を活用し、J-MINT認定推進機構株式会社(J-MAP)と連携しながら研究を進めていく。
自治体で導入可能・認知症予防プログラムの有効性を科学的に検証し、エビデンスを国内で初めて創出する試み
今回の研究では、全国19の自治体と共同で研究を推進していく。なお、秋田県潟上市では、秋田大学と連携して研究を進めていく予定だとしている。同研究は、自治体で導入可能な認知症予防を目的としたプログラムの有効性を科学的に検証し、そのエビデンスを国内で初めて創出する試みである。同プログラムの実施により、高齢者の認知機能の維持・向上に加えて、生活の質(QOL)の改善、健康寿命の延伸、さらには医療費・介護費の抑制にもつながることが期待される。
さらに、今後は「地域版J-MINT Brain Healthプログラム」を、誰もが・いつでも・どこでも受けられるサービスへと発展させることを目指す。その社会実装に向けて、J-MAPがプログラム全体の管理を担い、プログラムの提供事業者を「J-MINTパートナー」として認定する制度や、プログラムを実施する「J-MINTインストラクター」の育成・認証制度を運営する。これらの仕組みによって、科学的根拠に基づいた認知症予防活動を全国へと広く普及させていく、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・国立長寿医療研究センター プレスリリース


