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妊娠中に摂取したタンパク質のエネルギー比率、子の3歳時の発達に影響-山梨大

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2023年01月25日 AM10:44

母のタンパク質摂取制限、マウスで子の発達異常を引き起こすがヒトでの検証はなかった

山梨大学は1月16日、子どもの健康と環境に関する全国調査()に参加している約8万組の母子を対象に、妊娠中の母親のタンパク質のエネルギー比率が、生まれた子どもの3歳時の発達に与える影響を検討した結果を発表した。この研究は、同大エコチル調査甲信ユニットセンター(センター長:山縣然太朗社会医学講座教授)の三宅邦夫社会医学講座准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Pediatric Research」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

エコチル調査は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。臍帯血、血液、尿、母乳等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

多くの疫学研究により、「胎児期や乳幼児期の環境要因が成長後の健康や疾患のリスクにつながる」というDOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)概念が提唱されている。動物実験では、妊娠中および授乳中の母マウスのタンパク質摂取制限が子マウスの脳の発達異常を引き起こすことが示されているが、ヒトにおける検証はなされていない。そこで今回の研究では、大規模な追跡調査から、妊娠中の母親のタンパク質のエネルギー比率と3歳時点での子どもの発達への影響を検討した。

7万7,237組の母子対象、タンパク質のエネルギー比率で母親を3グループに分類

今回の研究では、エコチル調査に参加している10万4,062人の妊婦のデータおよび生まれた子どもの3歳時のデータのうち、調査への同意撤回、死産、流産、多胎、妊娠中2回の栄養調査(FFQ)の欠損、および3歳時の発達調査(ASQ-3)欠損のある人を除いた7万7,237組の母子を対象とした。

妊娠中の栄養調査から、タンパク質のエネルギー比率を算出。妊娠初期のタンパク質のエネルギー比率が、9.39%未満の人を「極端な低タンパク質」群、9.39%以上13%未満の人を「低タンパク質」群、13%以上の人を「標準」群とし、母親を3つのグループに分けた。3歳時の発達は、3歳質問票にて乳幼児発達検査スクリーニング(ASQ-3)の質問を用いて調査。5つの領域(コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会)の得点をもとに発達の遅れの有無を調べた。

極端な低タンパク質群の子、標準群の子と比べて3歳時点で発達の遅れ

以上のデータを使用し、妊娠初期および中期の母親のタンパク質のエネルギー比率と生まれた子どもの3歳時の発達の遅れの有無との関連について、多変量ロジスティック回帰分析を行った。妊娠中の栄養環境と子どもの発達に関連する可能性のある因子として、妊娠前の母親のBMI、妊娠時の母親の年齢、妊娠中の母親の喫煙、飲酒、世帯収入、両親の学歴、出生体重、早産、生まれた子の兄弟の数、性別、1歳時点の保育施設通園、母乳栄養が考えられ、それらを考慮して解析を行った。その結果、妊娠初期において「極端な低タンパク質」群の母親から生まれた子どもは、「標準」群の母親から生まれた子どもと比べて、3歳時のコミュニケーション能力(オッズ比:1.38、95%信頼区間:1.04-1.83)、微細運動能力(オッズ比:1.46、95%信頼区間:1.18-1.80)、問題解決能力(オッズ比:1.45、95%信頼区間:1.17-1.80)の発達の遅れが見られた。

妊娠中期のタンパク質のエネルギー比率によってもコミュニケーション能力で発達の遅れが見られたが、特に、妊娠初期のタンパク質のエネルギー比率の極端な低さの影響がより大きいことがわかった。

低タンパク質群では食品群摂取量に偏り、朝食欠食も多い

また、「標準」群の母親と比べて、「低タンパク質」群および「極端な低タンパク質」群の母親は、炭水化物摂取割合が高い傾向にあった。野菜類、魚介類、肉類などの食品群で摂取量が少ない一方、穀類、菓子類、し好飲料類(ソフトドリンクなど)の摂取量が多い傾向が見られた。さらに、「低タンパク質」群および「極端な低タンパク質」群の母親は、朝食欠食が多く見られた。

タンパク質以外の栄養素の影響も、引き続き検討が必要

大規模な追跡調査から、妊娠初期においてタンパク質のエネルギー比率が極端に低い母親から生まれた子どもは、標準的なタンパク質のエネルギー比率の母親から生まれた子どもと比べて3歳時点で発達の遅れが見られる割合が高いことが明らかになった。今回の研究では、妊娠中の母親のタンパク質のエネルギー比率に着目しているが、タンパク質のエネルギー比率が低いということは、炭水化物と脂質の摂取バランスも悪いことを意味している。したがって、タンパク質以外の栄養素の影響が表れていることも考え、引き続き検討が必要だとしている。動物実験では分子メカニズムとしてエピジェネティクスの関与が報告されている。今後は、エコチル調査においても分子メカニズムを追究する研究が必要だ、と研究グループは述べている。

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