医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > コロナ感染遺体への腔部封鎖・エンバーミング処置は感染防護に有効-東大医科研ほか

コロナ感染遺体への腔部封鎖・エンバーミング処置は感染防護に有効-東大医科研ほか

読了時間:約 1分56秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年01月20日 AM11:19

遺体からのSARS-CoV-2伝播に関する動物実験実施

東京大学医科学研究所は1月16日、遺体からの新型コロナウイルス()伝播に関する3つの動物実験を実施し、SARS-CoV-2に感染したハムスターの死体から非感染ハムスターにウイルスが伝播すること、また、エンゼルケアまたはエンバーミングの処置を行うことにより、ウイルスの伝播が防げることを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授らと、国立国際医療研究センター、、株式会社ジーエスアイの研究グループによるもの。研究成果は、「mSphere」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

感染ハムスターの死体から非感染ハムスターへのウイルス伝播を確認

はじめに、SARS-CoV-2を感染させたハムスターの生体1匹または死体1匹と、非感染ハムスター2匹を1グループとして同じケージに同居させ、24時間後に感染ハムスターをケージから取り出した。感染ハムスターを取り出してから3日後に非感染ハムスターのウイルス量を測定した。SARS-CoV-2を感染させたハムスターの生体との同居2グループ、死体との同居10グループでウイルス伝播の有無を解析した結果、生体からは2グループとも非感染ハムスターへのウイルス伝播が認められた。一方、死体からは10グループ中3グループで非感染ハムスターへのウイルスの伝播が認められた。

腔部封鎖処置を施した感染ハムスターの死体からはウイルス伝播なし

次に、SARS-CoV-2感染ハムスターの死体において、ヒトに対して行うエンゼルケアの処置の一つである鼻腔、口腔および肛門の封鎖を行って、非感染ハムスターと同居させたところ、10グループ中全てのグループにおいて、死体から生体へウイルスが伝播しないことが確認された。

エンバーミング処置を施した感染ハムスターの死体からもウイルス伝播なし

さらに、SARS-CoV-2を感染させ、死後エンバーミング処置を施したハムスターの死体1匹と、非感染ハムスター2匹を1グループとして同じケージに同居させ、ウイルス伝播の有無を調べた。10グループで解析した結果、いずれもウイルスの伝播は認められなかった。

研究成果はSARS-CoV-2の葬儀・火葬等に関するガイドラインに活用

研究により、SARS-CoV-2が死体から生体へ伝播する可能性が示唆されたが、鼻腔、口腔および肛門などの腔部を封鎖するエンゼルケア処置や、防腐剤を用いたエンバーミング処置を行うことにより、死体から生体へは伝播が防げることが明らかとなった。これらの結果から、感染遺体と接する場合において、感染防護対策の観点でSARS-CoV-2感染遺体における腔部への封鎖処置は有効であることが示唆された。

また、研究成果は早速、2023年1月6日に改訂された「新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン」におけるエンゼルケア(死後処置)に活用されている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 小児COVID-19、罹患後症状の発生率やリスク要因を明らかに-NCGMほか
  • CDK4/6阻害薬と顎骨壊死との関連を解明、医療ビッグデータで-岐阜薬科大ほか
  • 急性骨髄性白血病の正確な予後予測につながる遺伝子異常を発見-京大ほか
  • うつ病患者、「超低周波変動・超微弱磁場環境治療」で抑うつ症状が改善-名大
  • 食後インスリン分泌に「野菜を噛んで食べること」が影響する機序解明-早大ほか