医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > ビフィズス菌BB536摂取で、高齢者の慢性便秘症や上腹部症状が改善-順大ほか

ビフィズス菌BB536摂取で、高齢者の慢性便秘症や上腹部症状が改善-順大ほか

読了時間:約 4分3秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年12月01日 AM10:52

高齢者の慢性便秘症における「ビフィズス菌BB536」の有効性・安全性を検証

順天堂大学は11月28日、高齢者慢性便秘症患者に対してビフィズス菌(Bifidobacterium longum) (以下、ビフィズス菌BB536)摂取介入のプラセボ対照二重盲検試験を日本で初めて実施し、便秘症状の改善と上腹部症状の改善を確認したと発表した。この研究は、同大医学部附属 順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科の竹田努准教授、浅岡大介先任准教授、同大大学院医学系研究科 ジェロントロジー研究センターの大草敏史特任教授、佐藤信紘特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「he American Journal of GASTROENTEROLOGY」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

慢性便秘症は年齢とともに増加し、特に高齢者で多くみられる疾患だが、近年では腸内のみならず、パーキンソン病、フレイル、サルコペニア、メタボリックシンドローム等の代謝・動脈硬化性疾患との関連や、生命予後との関連も指摘されており、超高齢社会の日本において、健康長寿を妨げる一因となっている。医療現場における便秘症の治療もさることながら、予防や改善などの未病対策も重要視されてきている。

一方で、高齢者では便中のビフィズス菌の比率が減少していることが明らかになってきており、慢性便秘症と腸内細菌叢の関係が注目されている。特に、ビフィズス菌BB536は、乳児から分離され、ヒトでの摂取経験も豊富で安全な多機能プロバイオティクスであり、成人を対象とした臨床試験では排便回数の改善がすでに確認されているが、高齢者の慢性便秘症におけるビフィズス菌BB536の有効性や、プロバイオティクス摂取による腸内細菌叢の変化については、これまで詳細に検討されていなかった。そこで研究グループは今回、同菌株の二重盲検ランダム化比較試験を行い、有効性と安全性を検証することを目的に研究を行った。

高齢の慢性便秘症患者80人対象、単施設プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験

対象者は高齢(65歳以上)の慢性便秘症患者の男女80人。慢性便秘症は、Rome IV基準(機能性便秘+便秘型IBS)を満たし、かつ便秘症状重症度(CSS、Constipation Scoring System)スコアが6点以上の患者とし、単施設プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験を行った。

対象者をランダムに2群に分け、ビフィズス菌BB536を500億個含む粉末(スティック)または、ビフィズス菌を含まないプラセボ粉末(スティック)を1日1スティック、4週間摂取し、さらに摂取後4週間を後観察期間とした。便秘症状重症度(CSS、Constipation Scoring System)、FSSG問診票(FSSG、Frequency Scale for the Symptoms of GERD)は、摂取前と4週間後、摂取終了4週間後に実施し、腸内細菌叢は摂取前と4週間後に糞便を採取し、解析を実施した。

ビフィズス菌BB536摂取4週目以降に、排便回数や便秘症状重症度などが改善

CSSによる便秘症状重症度の評価では、ビフィズス菌BB536摂取群は摂取前(0週目)に比べ、摂取4週目で「排便回数」「便秘症状重症度(CSS)スコア」、8週目(後観察期間)で「排便困難」「便秘症状重症度(CSS)スコア」の有意な改善が確認された。

プラセボ群と比較すると、ビフィズス菌BB536の摂取により、摂取4週目で「排便回数」の有意な改善、「排便未完遂回数」や「便秘症状重症度(CSS)スコア」の改善傾向が確認された。

ビフィズス菌BB536摂取で、・胃もたれ・嚥下時つかえなどの症状も改善

ビフィズス菌BB536摂取群では摂取前(0週目)と比べ、摂取4週目で「胸やけ」や「嚥下時つかえ」、8週目(後観察期間)で「胃もたれ」「喉違和感」「嚥下時つかえ」「FSSGスコア」において有意な改善が観察された。一方、プラセボ摂取群では摂取前後でいずれも有意な変化は見られなかった。

また、プラセボ摂取群と比較して、ビフィズス菌BB536摂取群では、摂取4週目で「胸やけ」や「食後悪心」、8週目(後観察期間)で「腹部膨満感」「喉違和感」「嚥下時つかえ」「FSSGスコア」に有意な改善または改善傾向が確認された。

ビフィズス菌BB536の菌体成分や代謝産物が便通に影響を与えている可能性

腸内細菌叢解析を行った結果、ビフィズス菌BB536摂取前後で全体の構成に大きな変動は認められなかったことから、菌叢を介した影響よりも、ビフィズス菌BB536の菌体成分や代謝産物が便通に影響を与えている可能性が示唆された。

ビフィズス菌の摂取が、さまざまな腹部症状を有する高齢者の健康維持に役立つ可能性

慢性便秘症は高齢者で多く見られる疾患だが、高齢者では便中のビフィズス菌の比率が著しく減少することも知られている。今回、ビフィズス菌BB536摂取によって高齢者の慢性便秘症患者の便秘症状の改善、さらに上腹部症状も改善されることが、プラセボ対照二重盲検試験により、日本で初めて確認された。

胸やけや心窩部痛、腹痛、下痢、便秘といった消化管症状が慢性的に存在し、その原因となる器質的異常が認められないものを機能性消化管障害(functional gastro-intestinal disorders;FGIDs)と呼ぶが、その中に、胃痛や胃もたれを呈する機能性ディスペプシア(functional dyspepsia;FD)、機能性胸やけ(functional heartburn;FH)、便秘や下痢を呈する過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)などがある。これらの症状は腸内細菌叢の異常、粘膜免疫機構、内臓知覚過敏、中枢神経系調節異常など多くの因子が複雑に関連して発生するため、さまざまなFGIDsの中で、症状のオーバーラップや移行、消褪が認められることがある。同研究結果は、さまざまな腹部症状を有する高齢者に対して、ビフィズス菌の摂取が、便秘症状のみならず、上腹部症状も改善することを示唆しており、高齢者の健康維持に役立てられることが期待される。

研究グループは「順天堂大学は2021年1月にジェロントロジー研究センターを設立し、健康寿命延伸の対策拠点として稼働させている。近年、腸内細菌を含めた腸と全身が機能連関することが注目されているが、ジェロントロジー研究センターと腸内フローラ研究講座は互いに連携し、腸と全身の機能連関を精力的に研究していきたいと考えている」と、述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 肺がんの新規ALK阻害薬治療抵抗性、EGFRシグナルの関与を発見-京都府医大ほか
  • 妊娠時低酸素曝露が仔ラットの骨格筋に影響、DOHaD学説の新知見-東京医科大ほか
  • 妊娠成立に必要な胚着床機構をマウスで解明、不妊症の原因究明に期待-麻布大ほか
  • 【インフルエンザ流行レベルマップ第3週】定点当たり報告数9.59に増加-感染研
  • ヒトの持久運動パフォーマンス向上に貢献する腸内細菌を発見-慶大先端研ほか