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特定の腸内細菌と鉄の過剰摂取で、大腸がんの生存率が下がるメカニズム解明-熊本大

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2022年11月10日 AM11:11

大腸がん進行におけるフソバクテリウム・ヌクレアタム細菌感染と体内鉄量の関係性は?

熊本大学は11月8日、歯周病の原因菌として知られる「フソバクテリウム・ヌクレアタム()」が腸内に感染した大腸がん患者において、全身の鉄量が多いと生存率が低下することに着目し、「過剰な鉄」が、がんの進行を早めるメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院生命科学研究部の諸石寿朗教授、馬場秀夫教授、山根大侍特定研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「JCI insight」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

鉄は健康を維持するために必要なミネラルの一種で、健常な成人の体内には鉄釘1本分程度(約3~5g)の鉄が存在している。鉄の不足は貧血などの病気を引き起こす一方、過剰な鉄は、がんや神経変性疾患などの病気と関連することが知られており、体内の鉄量は厳密に調節される必要がある。これまで研究グループでは、体内の鉄量が一定に保たれる仕組みや、その仕組みが破綻した時に、体にどのような影響が起こるかについて研究してきた。

近年、大腸がんの発症と進行に腸内細菌の異常が関与することが注目されている。特に、歯周病の原因菌として知られるフソバクテリウム・ヌクレアタムは、ヒトの口腔内に常在する細菌で、大腸がんの組織に存在すると発がんや進行に関与することが、過去の研究で明らかにされてきた。しかし、フソバクテリウム・ヌクレアタム細菌感染を示す大腸がん患者において、どのような患者背景が大腸がんの進行を早めるのかについてはわかっていなかった。そこで研究グループは今回、大腸がんの進行におけるフソバクテリウム・ヌクレアタム細菌感染と体内鉄量の関係性を調べた。

204例の大腸がんサンプル対象、鉄がもたらす遺伝子発現変化等を解析

研究では、204例の大腸がんサンプルを対象に「フソバクテリウム・ヌクレアタム細菌感染の有無」「体内鉄量の指標となるトランスフェリン飽和度(TSAT)」「患者生存期間」の関係性を調べた。また、フソバクテリウム細菌感染に対する生体応答と鉄の関係性を調べるため、鉄の存在下・非存在下でフソバクテリウム・ヌクレアタムとマクロファージ細胞株を共培養し、トランスクリプトーム解析により、鉄がもたらす遺伝子発現の変化を比較した。

さらに、鉄が細菌に対する免疫応答の性質を変化させるメカニズムを解明するため、THP1マクロファージ細胞株を用いたシグナル伝達解析を行った。

フソバクテリウム・ヌクレアタム細菌感染+鉄過剰で大腸がんの進行が加速、生命予後が悪化

大腸がん患者を対象とした大腸がん切除手術後の生存期間解析の結果、フソバクテリウム・ヌクレアタム細菌感染に加えて鉄過剰があると大腸がんの進行が早まり、患者の生命予後が悪くなることが判明。また、体内鉄の指標となるトランスフェリン飽和度が高値の大腸がん患者においては、がん組織に存在するマクロファージに鉄が蓄積することを見出した。

さらに、マクロファージにおける鉄の蓄積は、フソバクテリウム・ヌクレアタムによるNF-κBシグナル応答を増強し、CCL8などのがん進行を促進する作用のある炎症性サイトカインの分泌を促すことを、トランスクリプトーム解析やシグナル伝達解析により明らかにした。

鉄や腸内細菌に着目した大腸がんの新たな予防法・治療法開発に期待

日本において大腸がんは罹患数・死亡率ともに高い病気であり、その対応は喫緊の課題となっている。今回の研究で得られた知見により、鉄と腸内細菌による大腸がん進行メカニズムの一端が明らかにされた。

「このことは、鉄や腸内細菌に着目した大腸がんの新たな予防法・治療法開発につながることを期待させるものであり、今後の研究において、鉄動態のさらなる理解と制御法開発に取り組んでいきたいと考えている」と、研究グループは述べている。

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