医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 「諦め」にシータ波が関連、脳波リズム制御で認知活動に変化を起こせる可能性-筑波大

「諦め」にシータ波が関連、脳波リズム制御で認知活動に変化を起こせる可能性-筑波大

読了時間:約 3分10秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年11月24日 AM11:45

諦める時の認知機能に関連する脳波リズムや行動は不明だった

筑波大学は11月18日、諦める時のプロセスには、前頭のシータ波という脳波リズムの増加が関係することを解明、さらに、脳磁気刺激によってシータ波が増加するように脳を刺激すると、諦めるまでの時間が早まることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大システム情報系の川崎真弘准教授と宮内英里研究員の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより

人間のウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)には、物事を正しく理解・判断し、適切に行動するための認知機能が高く保たれていることが重要だ。日常において、治療が必要な病気や障害とは言えないまでも、心身に影響を与えるような認知機能に関係する困りごとは多い。例えば、問題解決のプロセスにおいて、考え続けることが解決にならない場合、「諦める(考え続けることを止める)」という意思決定ができることは、適応的な行動として重要な要素だ。このような意思決定が上手くできない状態にあると、ある行動やネガティブな考えにとらわれる反すう思考により、思うような生活が送れないこともある。

認知機能を高める方法はさまざまな分野で研究されているが、認知や行動と脳のメカニズムの関係は十分にわかっていないことも多く、認知機能を改善させるための技術開発は容易ではない。近年、電気や磁気によって脳を間接的に刺激する非侵襲的脳刺激という技術を用いて、脳活動を変えようとする研究が注目されている。しかし、現状では、うつ病を中心に精神・神経疾患に対する効果を検証した研究が行われているものの、特定の認知機能の変容や向上を目指した研究は多くない。

認知機能は、脳波から評価される「脳の周期的な電気活動(脳波リズム)」と関係していることが知られている。近年の研究から、特定の認知機能の変容には、関連する脳波リズムが変化するように脳を刺激することが重要と考えられているが、これを実証した研究は、これまであまり行われていなかった。そこで研究グループは今回、これまで知られていなかった「諦める時の認知機能」に関連する脳波リズムを特定するとともに、その脳波リズムを、非侵襲的脳刺激の一つである反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)によってピンポイントで操作することで、脳波リズムと諦める時の行動がどのように変化するか調査した。

諦めた時には前頭のシータ波、解けた時には前頭のアルファ波がそれぞれ増加

研究ではまず、18~26歳までの健康な研究参加者18人について、クイズ(なぞなぞ)を解く課題中の脳波リズムを分析。研究参加者には、時間制限を設けずに難易度が異なるクイズを解いてもらい、クイズが解けた時、または解くことを諦めた時にボタンを押してもらった。ボタンを押す直前の脳波リズムから、諦める時のプロセスには前頭のシータ波の増加が、解けた時のプロセスには前頭の持続的なアルファ波の増加が関係することが明らかになった。

前頭のシータ波が増加するように脳を刺激すると、諦める行動がより早く生じることが判明

研究グループは、この関係性が正しいとすれば、前頭のシータ波が増えるように脳を刺激することで、クイズを解くのが難しい時に、より早く諦めるようになる可能性があると推察。18~39歳までの健康な研究参加者20人に対して、クイズ(クロスワード)を解く課題中に前頭をrTMSで刺激し、脳波リズムと、諦めるまでの時間を分析した。また、刺激の際には各研究参加者が持つ固有の脳波リズムを特定した上で、シータ波のリズムでの刺激に加え、比較対象として、アルファ波のリズムでの刺激と、擬似刺激(刺激音だけ流して実際には刺激しない)の条件も同時に実施した。その結果、刺激によって前頭のシータ波が増加するほど、諦めるまでの時間が早くなることが判明した。一方で、アルファ波を増加させても、諦めるまでの時間に変化はなかった。疑似刺激の場合、脳波リズムに変化は起きず、諦めるまでの時間も変化しなかった。

これらのことから、諦める時のプロセスには前頭のシータ波が関係すること、また、前頭のシータ波が増加するように脳を刺激すると、諦める行動がより早く生じることが明らかになった。さらに、脳波リズムを適切に制御することで、特定の認知や行動に変化を起こせる可能性が示唆された。

脳波リズム制御による認知機能を高める方法の確立を目指す

効率的に諦めることができる人は、反すう思考の傾向も低いことがわかっている。しかし、実験室内で人工的かつ一時的に起きた認知と行動の変化が日常生活とどの程度関連するのかは明らかになっておらず、日常の反すう思考を減らせるような脳波リズムの制御方法を明らかにする必要がある。また、認知機能にはさまざまな脳波リズムが関係している上、脳波リズムには個人差があるため、特定の認知機能に関する脳波リズムをピンポイントで操作することは容易ではない。

「今後、注意や記憶といった、他の認知機能に対するアプローチの検討や、脳波リズムと行動変容の個人差要因の解明などの研究を進め、脳波リズムの制御による認知機能を高める方法の確立を目指す」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 女性型XLSA、iPS細胞技術で初の病態モデル作製、治療薬候補AZAを同定-CiRA
  • SLE患者に伴うステロイド関連大腿骨頭壊死症、疾患感受性遺伝子領域を同定-理研ほか
  • 高齢者の腎臓病の悪化に関わる原因細胞と分子を同定-京大
  • 脳動脈解離診療の国際ガイドラインを作成-国循ほか
  • IgG4関連疾患、診断での「類似疾患除外基準」有用性を確認-岡山大ほか