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ブルーベリーに含まれるプテロスチルベン、マウスに経口投与でIBD抑制-東京理科大

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2020年09月29日 AM11:45

ポリフェノールの一種「」の免疫調節機能を検討

東京理科大学は9月28日、ブルーベリーなどの植物に含まれる「プテロスチルベン」が、潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患に見られる免疫細胞の過剰な活動を効果的に抑え、実際にマウスを用いたモデル実験では経口投与によって症状の進行を抑えることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大基礎工学部生物工学科の八代拓也講師、西山千春教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The FASEB Journal」にオンライン掲載されている。

生体内への病原体の侵入時に機能するさまざまな免疫細胞の中で、樹状細胞とT細胞は免疫反応の調節に重要な役割を担っていることが知られている。樹状細胞は主に皮膚、鼻腔、肺、胃、腸管といった外界に触れる部位に存在し、病原体など異物が侵入するとそれを抗原として取り込み、活性化してリンパ節に移動する。活性化した樹状細胞にはMHCクラスIIという膜タンパク質が細胞表面に発現しており、その上に抗原が提示される。一方、T細胞は、胸腺で成熟した後に「成熟ナイーブT細胞」としてリンパ節に移動するが、そこで表面に発現しているT細胞受容体(TCR)が、活性化した樹状細胞上のMHCクラスIIに結合した抗原を認識する。このとき、同時にT細胞表面に発現しているCD28という分子が樹状細胞上のCD80、CD86と結合して共刺激を受けることで、T細胞は活性化する。CD4T細胞は活性化するとインターロイキン-2()を分泌して増殖するとともに、「(機能によってTh1、Th2、Th17に分類)」や「(Treg)」などに分化する。何らかの原因でTh1、Th2、Th17が過剰な活性を持つことが炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、乾癬などの免疫疾患の原因になることが知られており、逆にTregは過剰な免疫反応を抑える働きをすることが報告されている。

西山教授の研究グループでは、食品中に含まれる成分やその腸内代謝産物などが免疫応答に及ぼす影響を細胞・遺伝子レベルで明らかにするとともに、生体の健康維持に寄与することを証明しようと研究に取り組んでいる。今回、八代講師らはポリフェノールの一種であるプテロスチルベンの免疫調節機能を検討することを目的に研究を行った。

Th1、Th17への分化を強く制限、Th2はほぼ影響なし、Tregは分化促進

まず、モデル抗原として卵白に含まれるタンパク質「オボアルブミン(OVA)」を取り込ませた樹状細胞(OVAを抗原として提示)と、OVAを特異的に抗原として認識するよう遺伝子改変したトランスジェニックマウスから取り出したナイーブCD4T細胞を、プテロスチルベン(PSB)やレスベラトロール(tRSV)などの化合物存在下で共培養し、T細胞の増殖・分化に対する効果を検討した。その結果、tRSVを用いた場合には若干T細胞の増殖が抑制されるのに比べ、PSBを用いた場合には、より効果的に抑制されることがわかった。

次に、T細胞をTh1、Th2、Th17、Tregそれぞれに分化させる条件下にPSBを添加してその影響を解析したところ、Th1、Th17への分化は強く制限され、Th2にはほぼ影響がなく、Tregの場合は逆に分化が促進されるという結果となった。

ナイーブCD4Tの増殖とTh1への分化を抑制

T細胞、樹状細胞それぞれに対するPSBの影響を個別に検討するため、まずナイーブCD4T細胞のみを抗CD3ε抗体、抗CD28抗体を結合させた培養プレート(樹状細胞からの抗原刺激を模倣することができる)を用いて増殖・分化を促す実験を行った。培養後、増殖を比較したところ、PSBにより明確に増殖が抑制される結果となり、また、T細胞からのIL-2産生も抑制されることが判明した。さらに、Th1、Th2、Th17、Tregそれぞれに分化させる条件では、PSBによってTh1への分化のみ抑制される結果となった。つまり、PSBのナイーブCD4T細胞への直接の影響としては、増殖を抑制することとTh1への分化を抑制することが明らかとなった。

樹状細胞でPU.1阻害<抗原提示関連遺伝子の発現抑制<Treg分化促進

続いて、PSBの樹状細胞への影響を調べるために、樹状細胞のみをPSBで処理する実験を行った。抗原提示に関与する遺伝子の発現レベルを解析したところ、PSB処理によって軒並み低下する結果となった。研究グループでは以前、同じ種類の遺伝子群の発現が転写調節因子PU.1によって促進されることを報告している。PU.1は、遺伝子の転写調節に関わるプロモーターに結合することで機能を発揮する。そのため、PSBで処理した樹状細胞において、PU.1発現レベルに影響があるかどうか、さらにはPU.1のプロモーターへの結合に影響があるかどうかについて検討を行った。

結果として、PSBの処理によってはPU.1発現レベルには影響がない一方、それぞれの遺伝子領域におけるプロモーターへのPU.1の結合が阻害されることが判明。つまり、PSBが樹状細胞内のPU.1のプロモーターへの結合を阻害することで、抗原提示に関与する遺伝子群の発現が抑制され、それがT細胞の活性化抑制につながる、ということが示唆された。実際にPU.1遺伝子をノックダウンした樹状細胞を用いるとナイーブCD4T細胞の増殖が抑えられるとともに、Tregへの分化は促進される結果となった。Tregへの分化は、Th1などとは違い、シグナル伝達の強度が弱い場合に起きることが最近報告されている。つまり、PSBがPU.1の働きを阻害することで樹状細胞の表面における抗原提示に関わるタンパク質発現が大きく減少し、T細胞が受け取るシグナルが弱まるため、Tregへの分化が促されることが強く示唆された。

経口投与でマウス大腸炎抑制、TNF-α発現抑制も確認

最後に、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎マウスモデルを用いて、実際の病態へのPSBの効果について検証を実施。10日間継続してDSSを与えたマウスは腸に炎症が起こり、結果として体重減少、疾患活動性指標(DAI)の増加、腸の短縮化を呈する。DSSとPSBの両方を与えたマウスではそれぞれが改善し、腸炎の病態形成に関わる腫瘍壊死因子TNF-αの発現も抑制されることが示された。つまり、PSBの経口投与によって腸の粘膜下の樹状細胞に効果が及び、PU.1の働きを抑制してTNF-αの分泌阻害につながったと考えられた。

八代講師は今回の研究について、「食品の機能性成分を同定し、その作用メカニズムを解明することは、病気予防のための食習慣の提案や治療薬開発へとつながる。今回、細胞を使った実験により免疫抑制効果の高いプテロスチルベンを選抜し、マウスの腸炎モデルにおいてプテロスチルベンの摂取が病態を改善することを示したことは非常に大きな成果だ」と、述べている。

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