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難治性急性リンパ性白血病に対する有効薬剤を発見、臨床応用に期待-愛知医大ほか

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2020年06月15日 PM12:15

融合型MEF2D転写因子を有する白血病に対する、「」をターゲットにした治療法

愛知医科大学は6月12日、難治性急性リンパ性白血病に対する新たな治療法を発見したと発表した。これは、同大医学部生化学講座の都築忍特任教授、名古屋医療センターの安田貴彦室長、名古屋大学医学部の早川文彦教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Blood Cancer Discovery」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

近年、次世代シークエンサー解析により、従来不明だった遺伝子異常が、多くのがんで明らかになってきている。研究グループは、急性リンパ性白血病の次世代シークエンス解析に参加し、従来不明であった遺伝子異常を見出し、2016年に論文発表した。その中で、「MEF2D」という転写因子が、他の遺伝子と融合する形で発現する「融合型MEF2D転写因子」を有する白血病が、比較的高頻度で存在することがわかった。ほどなくして、名古屋大学医学部小児科のグループから、融合型MEF2D転写因子を有する白血病が予後不良であることが発表され、その治療法の開発が望まれている。

がん細胞にも正常細胞にもいろいろな種類があり、それらの細胞の性質は、細胞の種類に特有の転写因子ネットワーク(core regulatory circuitry;以下コア・サーキット)によって決定されているという考え方がある。研究グループは今回、このコア・サーキットを同定し、コア・サーキットを壊すような薬剤が見つかれば、難治性白血病でも治療できるのではないかと考え研究を行った。

プレB細胞受容体が発するシグナルは、コア・サーキットの維持に必須

研究グループは、融合型MEF2D転写因子を有する白血病細胞株を、ゲノム編集技術を用いて解析しやすいように改変。この細胞を用いて、融合型MEF2D転写因子がゲノムDNA上のどこに結合するのかを、クロマチン免疫沈降法と次世代シークエンス技術を組み合わせた方法(ChIP-seq)により同定した。さらに、この白血病細胞のコア・サーキット転写因子群が結合するスーパーエンハンサーの同定、融合型MEF2D転写因子の発現を抑制した場合に起きる遺伝子発現変化の解析、多数臨床検体の遺伝子発現データの解析、白血病のマウスモデル作製、ヒト白血病細胞株のマウスへの移植および治療実験などを行った。

その結果、融合型MEF2D転写因子は、SREBF1などの他の転写因子と共同して、コア・サーキットを形成。このコア・サーキットは、プレB細胞受容体の発現を誘導するが、プレB細胞受容体が発するシグナルは、コア・サーキットの維持に必要である、というメカニズムが明らかになった。これは、コア・サーキット→プレB細胞受容体発現→プレB細胞受容体が発するシグナル→コア・サーキットという「いつまでも活性化し続ける回路」が形成されることを意味する。つまり、白血病の性質を決めるコア・サーキットの遺伝子が安定的に発現し、プレB細胞シグナルにより白血病細胞の増殖が刺激され続けることが、白血病の状態を維持していると考えられる。

有効な薬剤候補を同定、SREBF1阻害剤にコア・サーキット破壊による治療効果

この回路のどこかを遮断すればコア・サーキットを破壊することができ、白血病の治療につながると推測された。この戦略の利点は、白血病の直接の原因遺伝子(融合型MEF2D転写因子)を標的にする薬剤が開発できなくても、この回路のどこかを標的にする薬剤を開発すれば、薬剤開発の選択肢が広がることだ。そこで、この回路を遮断できる薬剤を探索。その結果、プレB細胞受容体シグナルを遮断する薬剤に、この白血病に対する治療効果があることが確認された。この薬剤はすでに他の疾患で使用されており、この白血病への応用も期待される。また、SREBF1は脂質代謝に関係する転写因子であり、その阻害剤が抗メタボ薬として開発中だが、この薬剤にも、コア・サーキットを破壊し、白血病に対する治療効果があることを見出した。

「今回の研究で、難治性の融合型MEF2D転写因子を有する白血病に対して有効な薬剤の候補を同定した。今後、より多数の臨床検体によって本研究結果が検証されれば、臨床応用が期待できる」と、研究グループは述べている。

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