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ウイルス除去効果のある再使用可能な新型マスク開発を始動-名大ほか

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2020年05月14日 PM12:00

マスク本体を再使用でフィルターは使い捨て、モニター販売を通じて継続的に改良

名古屋大学は5月11日、3Dプリンターを用いた、ウイルス除去効果のある再使用可能マスクの開発を始めたと発表した。これは、同大大学院工学研究科の堀克敏教授、三井化学株式会社および株式会社フレンドマイクローブ(名古屋大学発ベンチャー)の研究グループによるものだ。


画像はリリースより

新型コロナウイルス感染症の大流行で、使い捨てマスクの供給不足が続く中、さまざまな再使用可能なマスクが市場に出始め、また、布で手製されたマスクも増えている。しかし、そういったマスクの多くは、網目がウイルス除去効果のある不織布フィルターの網目よりずっと大きく、ウイルスを除去する効果は期待できない。かねてから3者は不織布に関する共同研究を行っており、マスク用フィルターの不織布を生産供給する三井化学と、堀教授が以前に設立したフレンドマイクローブとの三者で新規マスクの共同開発に取り組むことにした。

新マスクは、不織布フィルターのみを使い捨てとし、マスク本体は再使用可能なものを計画。マスク本体を3Dプリンターで作製することで、樹脂や形状の検討において迅速な改良を可能とした。開発を急ぎ、モニター販売をしながら、使い勝手がいいように改良していく予定としている。特に、1)メガネが曇る、2)耳が痛くなる、3)蒸れる、4)臭い、といった点は、マスクを外したくなる要因であり、こういった点の改善も継続的に図っていく。顔の形や大きさに合ったイージーオーダーやオーダーメイドのマスク開発も視野に入れているという。

マスク開発と同時に抗ウイルス効果のある酵素や薬剤も検討

使い捨てマスクでウイルスを除去するフィルター効果を発揮しているのが「」だ。不織布にはさまざまな種類があり、それぞれにあった用途がある。家庭用マスク向けの不織布は「メルトブローン法」により生産され、極細の繊維径(2-3μm)、および帯電処理を施すことにより、各種粒子を捕集する機能を持つ。フィルター性能を示すウイルス遮断効率(Viral Filtration Efficiency:VFE)や微粒子遮断効率(Particle Filtration Efficiency:PFE)は、Nelson Report認定を取得している。Nelson Report認定とは、米FDA(食品医薬品局)の登録検査機関「」による試験結果によるフィルター効果認定のこと。マスクの性能評価で最も使われており、試験結果は、VFEでは1.7µmサイズのウイルスが含まれる飛沫の遮断効果、PFEでは0.1µmサイズの微粒子の遮断効果によって示されている。

マスクを外す際にも注意が必要である。外側にはウイルスが付着している可能性が高いため、これに触れないようにマスクを外さなければならない。再使用する場合は、マスク表面への扱いも注意が必要。消毒薬で拭き取るということが簡便であるが、ウイルス流行時には、マスクだけでなくアルコール消毒薬なども供給不足になる。そこで、抗ウイルス効果のある酵素や薬剤があれば、アルコール消毒の代わりになる。今回は、そういったことも視野に入れて検討を進める。また、マスク本体自体は洗浄や消毒可能な素材で作製される予定だ。

これまでマスクを着用する習慣のなかった欧米諸国でも、マスクを着用するようになる人が増え、世界的にマスクの需要が伸びることが想定される。使い捨てマスクのごみ問題も提起される可能性があり、再使用可能なマスクの需要はますます高まるであろう。「マスク着用の機会が増えるにつれ、掛け心地やデザイン性も求められるようになることは言うまでもない。そういった需要にも応えることのできるマスクを開発したい」と、研究グループは述べている。

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