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網膜が光を感知する時、光受容タンパク質が瞬間的に集合していることが判明-神戸大

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2019年06月19日 PM02:30

ロドプシンは拡散している?集団を作っている?

神戸大学は6月14日、光受容タンパク質ロドプシンが網膜の円板膜内で一過性のクラスターを形成することを近赤外波長での単一分子追跡で明らかにしたと発表した。この研究は、同大学院理学研究科の林文夫名誉教授、同大バイオシグナル総合研究センターの森垣憲一准教授、理学研究科の前川昌平名誉教授、浜松医科大学医学部の妹尾圭司准教授、自治医科大学医学部の齋藤夏美研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Communications Biology」に同日付で掲載された。


画像はリリースより

網膜視細胞は円筒形の光受容部を持っているが、その中には直径数ミクロンの円板状の膜()が1,000層ほど積層されている。円板膜はせんべいのような形をした脂質二層膜で、その中に光受容タンパク質ロドプシンが高濃度に組み込まれている。ロドプシンは細胞が外界の様子を知るために用意している多様なGタンパク質仲介型受容体()と呼ばれる膜タンパク質の代表格で、最もよく研究されたGPCRとも言われている。

一方で、ロドプシンが単独で拡散しているのか、あるいは何らかの集団を作っているのかは不明だった。この問題は、単に膜内でのタンパク質の存在の仕方にとどまらず、膜の脂質の存在のしかたにも重要な意味を持つ。生体膜を構成する脂質には、コンパクトな飽和脂肪酸をもつ脂質と、かさばった不飽和脂肪酸鎖をもつ脂質があり、前者はコレステロールと共に集まって液体秩序相()を作りやすく、後者は比較的流動的な液体非秩序相(非ラフト)を作る傾向がある。研究グループは既に、2個のロドプシンが近接すると劇的にラフトに親和的になることを発見しており、円板膜内でロドプシンが集団を作ればそれは一種のラフトになると推定していた。

独自の観測手法によってロドプシンのクラスター形成を実証

そこで今回の研究では、最新の技術と解析手段を使って、ロドプシンや脂質が円板膜内でどのような状態で存在するのか、またそれらはラフトとどういう関係にあるのかなどを探究した。細胞内で生体分子がどのように存在するのかを明らかにするには、その分子を蛍光標識して一分子観察するのが有効だが、ロドプシンは光を感じるタンパク質なので、一般に使われている可視光領域では、ロドプシンを刺激してしまい、蛍光一分子観察はできない。そこで研究グループは、ロドプシンを刺激しない近赤外領域での蛍光一分子観察に挑戦した。

その結果、網膜視細胞の光受容膜(円板膜)での光受容体タンパク質ロドプシンやGタンパク質トランスデューシンの一分子観察に世界で初めて成功。ロドプシンの一分子軌跡データを用いたベイズ推論による機械学習などによる解析から、ロドプシンは3つの拡散状態の動的平衡にあり自発的に1ミクロンに満たない瞬間的な集団を作ることが判明。独自の観測手法によってロドプシンのクラスター形成を実証するとともに、円板膜内にはラフト(脂質液体秩序相)への親和性の違いによる同心円状の構成的不均一が存在することが明らかになったという。

今回の研究によって、(1) ロドプシンはラフト親和性クラスターを作り、Gタンパク質トランスデューシンの活性化に寄与する瞬間的な足場を提供している、(2) ロドプシンのクラスターや二量体は円板膜辺縁部の非ラフト的膜から排斥され中央部に集められている、などのことがわかった。これらの発見は細胞を構成するさまざまな他の膜でも同様の瞬間的な不均一や周囲の枠組に規定された構成的不均一さが予想外の重要な役割を持つことを示唆している。これらの研究成果は、光信号受容の分子機構解明だけでなく、視細胞の形成・維持・病変の理解にも寄与すると期待される。

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