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骨髄移植における造血幹細胞の生着にはガラクトース糖鎖が必須と判明−京大

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2019年05月20日 PM12:15

移植HSCのホーミングと生着における糖鎖の重要性を研究

京都大学は5月16日、骨髄移植後の造血幹細胞(HSC)の骨髄へのホーミングと生着に、ガラクトース糖鎖が重要な役割を果たしていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の浅野雅秀教授、同人間健康科学系専攻の山下莉映子大学院生、岡昌吾教授、理化学研究所の宮西正憲研究員らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に5月9日付で掲載された。


画像はリリースより

骨髄に存在するごく少数のHSCは、自己複製しつつ、日々全ての血球細胞を作り出している。そのため、骨髄細胞に少数含まれるHSCの移植により、全ての血球細胞を再生することができる。骨髄移植に用いるHSCは、骨盤などの骨髄から採取されるが、臍の緒と胎盤に含まれる臍帯血からも採取される。特に臍帯血は採取できる量が限られるため、移植後のHSCの骨髄へのホーミングと生着をできるだけ効率良く行う必要がある。ホーミングと生着にはVLA-4/VCAM-1やCXCR4/CXCL12などの分子が重要な役割を担うことが知られているが、糖鎖については詳しくわかっていなかった。

ガラクトース糖鎖が、骨髄へのホーミングに重要と判明

今回研究グループは、β4GalT-1遺伝子欠損マウスから調製した骨髄細胞を致死的な放射線照射をした野生型マウスに移植した。β4GalT-1は、ガラクトース糖鎖をHSCに付加する転移酵素のひとつ。結果、この骨髄細胞を移植されたマウスは、移植後10日以内に死亡した。これは、移植しなかった場合と同様だった。一方で、野生型マウスの骨髄細胞を、同様に放射線照射した野生型マウスに移植した場合にはずっと生存したことから、β4GalT-1欠損マウスの骨髄細胞はレシピエントマウスに生着できないとわかった。

次に、移植24時間後にレシピエントマウスの大腿骨から骨髄細胞を調整し、コロニー形成能を調べた。その結果、β4GalT-1欠損マウス由来の骨髄細胞は野生型マウスに比べて10分の1のコロニー形成能しかなかった。一方で、β4GalT-1欠損マウスの骨髄細胞を、移植せずにそのままでコロニー形成能を測定したところ、野生型マウスの骨髄細胞と同等の能力があり、β4GalT-1欠損マウスの骨髄細胞そのもののコロニー形成能は正常だと確認できた。また、FACSを用いた解析でもβ4GalT-1欠損マウスの骨髄のHSCの数は正常だったことから、骨髄へのホーミングに問題があると判明した。

また、胎児期の造血は肝臓で行われるため、マウス胎仔の肝臓細胞を調製して、同様の実験を行ったところ、β4GalT-1欠損の胎仔肝臓由来HSCは、その数やコロニー形成能は正常だったが、移植後のホーミングが5分の1に減少していた。したがって、骨髄や胎仔肝臓から調製したHSCのガラクトース糖鎖は、移植後のHSCの骨髄へのホーミングと生着に必須の役割を果たすことが明らかとなった。

糖鎖の人工的修飾により骨髄移植の効率を増強できる可能性

最後に、分化した血球細胞を除去した未分化の骨髄細胞を調製し、レクチンブロット法で糖鎖構造を解析したところ、β4GalT-1欠損マウスでは高分子量の多くのタンパク質のガラクトース糖鎖が消失していた。具体的なタンパク質の同定には至らなかったが、この中のタンパク質のガラクトース糖鎖がHSCの骨髄へのホーミングと生着に必須の役割を担っていると、研究グループはみている。

「今回の研究成果は、HSC表面の糖鎖を人工的に修飾することで、骨髄移植の効率を増強できる可能性を示しており、臨床応用につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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