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T細胞活性化を抑制する新たなシグナル経路を発見、がんや感染症治療の新たな標的として期待-理研

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2019年02月08日 PM12:45

アダプター分子CIN85とCD2APのT細胞での機能を探る

理化学研究所は2月6日、シグナル伝達を担うアダプター分子「」が、T細胞では活性化を抑制するシグナルを誘導することを明らかにしたと発表した。この研究は、理研生命医科学研究センター免疫シグナル研究チームの斉藤隆チームリーダー、多根(橋本)彰子上級研究員らの国際共同研究グループによるもの。研究成果は、国際科学雑誌「Science Signaling」2月5日号に掲載された。


画像はリリースより

病原体やがんなどに対する有効な免疫機能は、T細胞の活性化によって誘導される。T細胞は、T細胞抗原受容体(TCR)によって抗原を認識する。抗原認識をしたTCRはミクロクラスターを形成し、ここにキナーゼ(リン酸化酵素)やアダプター分子(シグナル伝達分子)などを集積して活性化シグナルを誘導する。斎藤隆チームリーダーらは、これまでT細胞の活性化の場としてのミクロクラスターを解析するとともに、その下流の種々のシグナル分子の役割を解析してきた。アダプター分子であるCIN85とCD2APは、相同性が高くファミリーを形成するが、T細胞における機能はわかっていなかった。

CIN85がT細胞の活性化を抑制

そこで今回、同研究グループは、2つのアダプター分子CIN85とCD2APのT細胞における機能を解析するために、T細胞特異的にそれぞれの分子を欠損(KO)したマウスを作り、T細胞機能を解析した。まず、それらのマウスのT細胞を抗原や抗TCR抗体で刺激(TCR刺激)したところ、CIN85-KO T細胞では、細胞増殖やサイトカイン産生が亢進した。すなわち、CIN85はT細胞の活性化を抑制しているとわかった。さらに詳しく解析したところ、CIN85はシグナル伝達経路のZAP70キナーゼ下流の活性化シグナルを抑制していることが示された。また、CIN85-KO T細胞では、TCR下流シグナルの活性化亢進と相まって、エフェクターT細胞への分化とTh1細胞への分化亢進も見られた。一方で、CD2AP-KO T細胞では正常細胞との違いがみられず、CD2APはT細胞機能に特別な役割を持たないことがわかった。

次に、CIN85を介するT細胞の活性化の抑制のメカニズムを解明するために、CIN85のT細胞活性化の抑制に重要な領域(SH3 PR領域)を同定し、その領域に結合する分子を質量分析法で解析した。結果、脱リン酸化酵素Sts-2がCIN85と会合することがわかった。実際、TCR刺激による活性化に伴ってCIN85とSts-2は会合し、両者の欠損T細胞ではサイトカイン産生などの活性化がより強く亢進することが示された。

新たながん免疫療法や感染症の標的として期待

最後に、CIN85、およびSts-2のミクロクラスターへの集積を全反射照明蛍光顕微鏡で観察したところ、抗原刺激によってCIN85はミクロクラスターに集積し、Sts-2も多くがCIN85によって集積することがわかった。CIN85と会合することが既に知られていたユビキチンリガーゼCblも同様にミクロクラスターに集積することから、CIN85//Sts-2が、活性化に伴ってTCRミクロクラスターに集積し、抑制クラスターを形成して、T細胞活性化を抑制していると研究グループは考察している。

現在、有効な治療として使われている免疫チェックポイント療法では、T細胞の抑制系を阻害することで、抗腫瘍免疫を亢進させている。今後、T細胞のCIN85-Sts-2を標的に新しいがん免疫療法や感染症の治療法の開発に発展する可能性が期待できる、と研究グループは述べている。

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