医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > EGFR変異陽性肺がんに対するオシメルチニブ耐性克服療法を発見-がん研ら

EGFR変異陽性肺がんに対するオシメルチニブ耐性克服療法を発見-がん研ら

読了時間:約 2分58秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2017年03月16日 PM01:45

オシメルチニブ治療中の患者に出現するC797S変異に対する治療法開発へ

公益財団法人がん研究会は3月13日、C797S遺伝子変異によりオシメルチニブに耐性となった細胞に対して、現在ALK阻害薬として開発が進んでいるブリガチニブが有効であることを発見したと発表した。この研究は、がん研の片山量平氏らの研究グループによるもの。研究成果は「Nature Communications」に3月13日付けで掲載されている。


画像はリリースより

上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異は進行非小細胞肺がんの3~4割に見られ、EGFR阻害薬が非常に高い効果を示すが、1年程度で耐性を生じて再増悪する。この耐性のおよそ半数を占めるのがEGFR-T790M変異だ。そのEGFR-T790M変異にも有効なEGFR阻害薬のオシメルチニブが、2016年から日本でも処方可能となった。しかし、さらなる耐性の出現が確認されており、C797S変異の追加(EGFR-T790M/C797S)はその原因のひとつであり、臨床応用された全てのEGFR阻害薬で効果が得られなくなると報告されている。C797S変異はオシメルチニブ使用中の患者の約2割に出現することが報告されており、今後相当数の患者で認められることが予想される。現在、この変異によって再増悪した時の治療法は明確でなく、研究グループはオシメルチニブ耐性を克服しうる治療法を発見するため、研究を進めてきたという。

今回研究グループは、IL-3依存的に増殖するマウス前駆Bリンパ球(Ba/F3細胞株)に、活性化変異型EGFRを遺伝子導入することで、IL-3に依存せずにEGFRに依存して生存・増殖するBa/F3細胞を作製、分子標的薬に対する反応性を検討した。その結果、EGFR活性化変異単独では、EGFR阻害薬のゲフィチニブ、アファチニブ、オシメルチニブのいずれもが有効だったが、T790M変異が加わる2重変異ではオシメルチニブのみに有効性が認められ、さらにC797Sが追加される3重変異になると、これらすべての薬剤は効果を示さなくなった。

そこで、この3重変異EGFRに対して有効な薬剤を発見するために、現在すでに臨床応用されている薬剤または開発中の薬剤を中心にスクリーニングを実施。ALK融合遺伝子陽性肺がんに対する治療薬として開発中のALKチロシンキナーゼ阻害薬ブリガチニブが、3重変異EGFRに有効であることを見出した。この薬効は、遺伝子導入により人工的に作製した3重変異EGFR陽性Ba/F3細胞だけでなく、肺がん患者の肺がん細胞から樹立された3重変異EGFR陽性細胞においても確認することができたという。

+セツキシマブやパニツムマブ併用で耐性克服の可能性

ALK阻害薬はブリガチニブ以外にも複数存在している。研究グループは、それらについても検討を行った結果、ブリガチニブのみが3重変異EGFRに対して有効性を示した。そこでこの薬効の差異と各阻害薬の構造式を比較し、ブリガチニブのどの構造が3重変異EGFRの阻害活性に寄与しているかを同定。さらに、、理化学研究所との共同研究により、スーパーコンピュータ「京」を用いたタンパク質構造シミュレーションを行うことで、ブリガチニブが3重変異EGFRにどのように結合してその機能を阻害しているか、結合に寄与度の大きい原子はどれかを推定することに成功したという。

一方、ブリガチニブ単剤では、3重変異EGFRを有する肺がん細胞をマウスに移植して作製した担がんマウスモデルでの動物実験では、期待されるほどの抗腫瘍効果を示さなかった。しかし、EGFRに結合しその機能を阻害する抗EGFR抗体のセツキシマブやパニツムマブをブリガチニブと併用すると、ブリガチニブの効果が顕著に高まることを、細胞株、および担がんマウスモデルを用いた実験の結果新たに見出すことに成功した。さらにブリガチニブは、野生型EGFRを阻害する活性が変異型EGFRを阻害する活性に比べ10倍程度弱く、変異型EGFRに選択的に阻害活性を示したという。このことは、ブリガチニブと抗EGFR抗体の併用が、EGFRの3重変異によるオシメルチニブ耐性を克服する手段の候補になりうることを期待させる結果であり、臨床試験による安全性および有効性の検討が待たれる。

ブリガチニブは現在、ALK陽性肺がんに対する治療薬として第3相臨床試験中。セツキシマブとパニツムマブは大腸がんや頭頸部がんですでに実臨床で使用されている。そのため、新たな治療薬開発に比べ、より早く臨床的な効果や安全性を検証する臨床試験へと繋げられることが期待できる。さらに、C797S変異をもったEGFRへのブリガチニブの結合部位に関する情報と、ブリガチニブの誘導体展開可能と考えられる部位に関する情報は、今後、より強力で特異的な治療薬の開発へと展開するうえで重要な情報となると、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 日本人遺伝性前立腺がんの原因遺伝子・発症リスク・臨床的特徴を明らかに-理研ら
  • COPDの病態形成に、細胞死「フェロトーシス」が深く関与していると判明-慈恵大ら
  • 老化やがんの原因となる「酸化ストレス」を感知するメカニズムを明らかに-東北大
  • 鳥インフルエンザウイルスの伝播過程における特性変化を解明-京都府医大
  • 肝静脈波形を数値化し、新しい肝線維化診断法を開発-東大病院