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妊娠高血圧症候群、発症リスクと血中重金属元素濃度の関連を確認-環境研ほか

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2025年11月14日 AM09:10

血液中重金属濃度と妊娠高血圧症候群の関連、一定した結果は得られていなかった

国立環境研究所は10月28日、妊婦の妊娠中期~後期の血液中の重金属元素(鉛、カドミウム、水銀)濃度と妊娠高血圧症候群の関連性を調べるために、エコチル調査の8万8,670人のデータを解析した結果を発表した。この研究は、同研究所エコチル調査コアセンターの森本靖久研究生をはじめとする研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に掲載されている。


画像はリリースより
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心血管疾患は重要な健康問題で、全世界において死因の第一位を占めている。女性において、妊娠高血圧症候群は心血管疾患のリスクを高める要因として注目されている。妊娠高血圧症候群のリスクを高める要因として、肥満、高血圧症の既往、腎臓病の既往、乱れた食生活などがある。

これまでの研究では血液中の重金属濃度と妊娠高血圧症候群との関連について報告があるが、結果は一定しておらず、診療ガイドラインには重金属に関する記載はない。結果のばらつきの要因として、対象者の数が少なかったことや、国によって重金属へのばく露量や血中重金属濃度が異なることなどが考えられた。

エコチル調査約10万組親子対象、血中鉛・カドミウム・水銀濃度と妊娠高血圧症候群の関連性検証

子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査である。さい帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質などの環境要因との関連を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学などに地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

そこで今回の研究では、重金属へのばく露が比較的少ない日本の妊婦の血中重金属元素濃度と妊娠高血圧症候群の関連性を検証した。同研究では、エコチル調査に参加した約10万組の親子のうち、高血圧および腎疾患の既往歴がなく、妊娠中期~後期の血液中重金属元素(鉛、カドミウム、水銀)濃度が測定されている8万8,670人の妊婦のデータを使用した。対象者のうち妊娠高血圧症候群を発症したのは2,703人(3.1%)。解析では、血液中の鉛、カドミウム、水銀のそれぞれの濃度が低い妊婦から順にならべ、全体を四等分し4つのグループに分けた。

血中鉛・カドミウム・水銀濃度が高い女性は妊娠高血圧症候群発症リスク「高」

血液中の鉛濃度が一番高いグループの女性は、濃度が一番低いグループの女性と比べ、妊娠高血圧症候群の発症リスクが58%高くなった。血液中のカドミウム濃度が一番高いグループは、濃度が一番低いグループと比べ、発症リスクが30%高くなった。血液中の水銀に関しては、濃度が一番高いグループは濃度が一番低いグループと比べ、発症リスクが15%高くなった。

対象者数が多く信頼度の高い結果、因果関係・重金属ばく露減の効果の検証は今後の課題

世界の中でも比較的重金属へのばく露量が少ない日本の妊婦において、重金属へのばく露は妊娠高血圧症候群のリスクを高める可能性が示された。同研究は過去の研究よりも対象者の数が大幅に多く、信頼度は高いと考えられる。しかし、同研究では重金属元素の測定時点と妊娠高血圧症候群発症の時期が重なっていることから、因果関係が逆転している可能性がある。つまり、妊娠高血圧症候群発症が重金属元素の血中濃度が高くなる原因になっている可能性がある。

この研究の結果を踏まえ、重金属のばく露を減らすことによって、妊娠高血圧症候群および将来の心血管疾患リスクを下げることができるかについて今後さらなる研究が必要である、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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