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低体重若年女性は腸内細菌叢の多様性が低く炎症と関連する菌が多い-藤田医科大ほか

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2025年11月13日 AM09:20

若年女性における体型と食事パターンおよび腸内細菌叢の多様性との関連は?

藤田医科大学は10月28日、20代・30代の低体重女性では腸内細菌叢の多様性が低く、炎症に関係する菌が多いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部臨床栄養学 飯塚勝美教授とシンバイオシス・ソリューションズ株式会社らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本では若年女性の低体重が多く、この傾向は20年間変わっていない。若年女性の低体重は月経不順や不妊の原因になるほか、低出生体重児の出産リスクや将来の骨粗しょう症リスクを高める。

研究グループはこれまで、低体重女性におけるビタミン欠乏のリスクを報告してきた。特に食事のパターンでは、20代に比べ40代、50代では食事の多様性も改善し、海藻、果物、乳製品も取るようになるが、20代男女とも食事の多様性は低いことがわかっている。

また、食事のパターンに加え、腸内細菌叢パターンと体格の関連も報告されている。肥満と腸内細菌の関係は多く報告されているが、神経性食思不振症では酪酸産生菌の低下が報告されている。しかし、日本における低体重女性の腸内細菌叢パターンについては明らかになっていない。そこで今回の研究では、若年女性における体型と食事パターンおよび腸内細菌叢の多様性との関連を検討することを目的とした。同研究により、低体重で増加する菌が同定されれば低体重を来す腸内環境の理解だけでなく、食事介入による改善の可能性も期待できる。

20~39歳の低体重女性と正常体重女性に対し、食事調査と腸内細菌叢検査を実施

検診でBMI<17.5により栄養評価外来を受診した20~39歳の女性40人(低体重群)と、年齢をあわせた18.5≦BMI<25の女性40人(対照群)を対象とした。食事パターンは主な食品10カテゴリー(肉、魚、卵、大豆製品、乳製品、果物、海藻、芋、油脂類)の摂取多様性スコアにより評価した。腸内細菌叢のα多様性は、Shannon指数、Simpson指数およびPielou指数で評価し、β多様性はNMDSとRDAで解析した。グループ間差に寄与した属は、RDAとALDEx2で同定した。

低体重女性は腸内細菌叢のα多様性が有意に低く、食事パターンのα多様性は差認めず

まず、低体重女性は腸内細菌叢のα多様性が有意に低く、食事パターンのα多様性には差が認められなかった。また、BMIとα多様性の関係を見ても、BMI16から20にかけて腸内細菌のα多様性は増えているが、食事パターンの場合はBMI18くらいが最も高い結果だった。

低体重・正常体重それぞれで優勢な菌を同定

次に、β多様性について、NMDSでは腸内細菌叢のβ多様性に有意差(PERMANOVA: R2=0.064, F=5.31, p=0.0001)が認められたが、食事パターンには差はなかった(p=0.99)。RDAでは、体型(BMI)が分散の4.5%を説明した(adjusted R2=0.032, F=3.65, p=0.0005)。

低体重女性ではBacteroides, Bifidobacterium, Enterocloster, Erysipelatoclostridiumが優勢であり、対照ではFusicatenibacter, Agathobacter, Dorea, Prevotellaが優勢だった。ALDEx2でもBacteroides, Enterocloster, Erysipelatoclostridiumの増加およびDoreaの減少が確認された。

今回の結果では、低体重女性は腸内細菌叢多様性の低下と、炎症傾向に関連する細菌の増加を示していた。プロバイオティクスだけでなくプレバイオティクスも活用した食事療法は、腸内細菌叢の有用な調節と低体重管理への貢献が期待される。(QLifePro編集部)

 

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