脳MRI画像所見とFABとの関連は?
国立長寿医療研究センターは10月22日、脳MRI画像の異常所見(基底核領域の血管周囲腔拡大)が、前頭葉機能検査(FAB:Frontal Assessment Battery)と関連することを発見したと発表した。この研究は、同センターもの忘れセンターの佐治直樹副センター長と金城よしの外来研究員、琉球大学、久留米大学医学部医療検査学科の室谷健太教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、2025年10月に開催された国際学会「World Stroke Congress2025(WSC2025)」で発表され、「Journal of Alzheimer’s Disease」にも掲載されている。

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FABは、脳の前頭葉機能を中心に評価する検査。言葉の概念化(類似の把握)、言語流暢性、運動プログラミング、干渉への感受性、抑制性制御、理解行動を調べる6項目で構成されており、スコアが低下するほど前頭葉の機能障害の可能性が高くなる。
血管周囲腔は、脳血管周囲における髄液や間質液が貯留している腔のことで、穿通動脈(基底核部)や髄質動脈(半卵円中心部)で発達している。脳MRI画像の「拡大血管周囲腔」の画像所見は脳ドックなどで高齢者に散見され、認知症との関連でも最近注目されつつあり、今後MRI画像の詳細な解析による認知症の発症機序の解明が期待されている。
FAB低下群では、MMSEスコア低下/血漿ニューロフィラメントL高/基底核領域EPVS高
研究グループは今回、もの忘れセンターで実施している「腸内細菌研究」で得られたMRI 画像所見と認知機能検査との関連について解析した。
FAB正常群と低下群での比較では、FAB低下群はMMSEスコアが低下し、血漿ニューロフィラメントLが高値であり、基底核領域のEPVSが高度である割合が多いことが判明した。
基底核領域のEPVS、他の関連因子と独立してFABが低下するオッズ比約4.4倍高
また、FAB低下に関する多変量ロジスティック回帰分析では、基底核領域のEPVSは年齢など他の関連因子と独立して、FABが低下するオッズ比が約4.4倍高かった(FAB <13点)。
認知症の発症機序解明において新しいアプローチとなる可能性
今回の研究結果により、脳の基底核領域の血管周囲腔拡大は、FABと独立して関連することが判明した。「血管周囲腔拡大は脳小血管病の1病型であり、高齢者における血管リスクの管理が、認知機能の維持に重要かもしれない」と、研究グループは述べている。
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・国立長寿医療研究センター プレスリリース


