ゴルジ体膜を利用した分解系のGOMED、その基質認識機構は未解明
東京科学大学は10月20日、細胞が不要なタンパク質や構成要素を処理するための新しい分解システムであるゴルジ体膜関連分解(Golgi-membrane-associated degradation:GOMED)が、どのように基質を選択して分解するのかを明らかにしたと発表した。この研究は、同大総合研究院高等研究府病態細胞生物学研究室の清水重臣特別教授、仁部洋一プロジェクト助教と、同大消化器内科、広島大学、Monash大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」にオンライン掲載されている。

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細胞内では、不要になったタンパク質や小器官を分解して恒常性を維持する仕組みが備わっている。その代表がオートファジーである。一方で、GOMEDは、ゴルジ体膜を利用して不要な構成要素を分解する、もう一つの仕組みである。GOMEDは進化的に保存されたシステムで、ヒトの体を構成するすべての細胞で機能している。GOMEDは、サイトカインなどゴルジ体を経由して細胞外に分泌される分子を分解し、オートファジーなどとは分解するタンパク質が大きく異なるため、生体内での役割も異なる。また、GOMEDの機能が変調すると、生体にさまざまな不具合を引き起こす可能性があり、GOMEDの機能異常は、神経変性疾患をはじめとするさまざまな疾患の原因となる可能性が報告されている。
しかし、GOMEDがどのように基質を認識して分解するのかは未解明であり、今回、世界で初めてその認識機構が明らかになった。
基質認識分子OPTNがK33ユビキチン鎖認識
細胞内でタンパク質を分解する際、その基質を認識する分子として、これまでに5種類のタンパク質が知られていた。研究グループは、この5種類のいずれかがGOMEDに関与すると考え解析を行った結果、オプチニューリン(OPTN)が重要であることを見出した。さらに、OPTNが何を目印にして基質を認識しているのかを検討したところ、ユビキチン分子(Ub)が形成する「K33鎖」が目印として機能していることを突き止めた。
第三のタンパク質分解系、赤血球のミトコンドリア除去にも機能
この「基質―K33Ub-OPTN-GOMED分解」という機構は、多様な細胞膜タンパク質の分解だけでなく、赤血球の最終分化過程におけるミトコンドリア除去にも機能していることが明らかになった。
なお、K48Ubはプロテアソームによるタンパク質分解に、K63Ubや直鎖Ubはオートファジーによる分解に重要であることが知られている。これに対し、K33Ubを利用したGOMEDによる分解は、新たに「第三のタンパク質分解系」と位置付けられる。
細胞内分解の新しい仕組み、神経変性疾患や炎症性疾患の新たな治療につながる可能性
今回の発見は、細胞が不要となった細胞内構成物を分解する新しい仕組みを示すものであり、神経変性疾患をはじめとする多様な疾患の理解に新たな視点をもたらす。さらに、GOMEDを応用した研究は、新たなコンセプトに基づく疾患治療薬の開発へとつながることが期待される。
今回の研究で明らかになったGOMEDの仕組みは、神経変性疾患や炎症性疾患の克服につながる可能性がある。「今後は、多様な疾患の病態においてGOMEDの基質認識機構がどのように関与しているのかを解明することで、新たな治療戦略の開発へと発展させていくことが期待される」と、研究グループは述べている。
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