指定難病「iMCD」、根本的な治療法は確立されていない
岡山大学は10月16日、特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)のタイプごとにIL-6を作り出す細胞や、その仕組みが異なることを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大学術研究院保健学域 分子血液病理学の錦織亜沙美助教、西村碧フィリーズ講師、佐藤康晴教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Haematologica」に掲載されている。

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iMCDは指定難病の一つであり、全身のリンパ節の腫れや、発熱・倦怠感といった症状を示す。iMCDは大きくIPLとTAFROの2タイプに分けられるが、病気の仕組みは明らかになっていない。
これまでの研究により、炎症を引き起こす物質であるIL-6の増加が病気に関連していることがわかっており、症状を軽減する治療法としてIL-6阻害剤が使用されている。iMCD-IPL患者に対してはIL-6阻害剤が有効である場合が多いが、iMCD-TAFRO患者では効果が限定的であることが知られている。しかし、IL-6阻害剤は対症療法であり、根本的な治療法がないことが問題となっている。
病型によってIL-6産生細胞が異なることが判明、日本人に多いタイプではXBP1遺伝子が関与
今回の研究では、iMCD患者の遺伝子やタンパク質の発現を詳細に解析し、iMCDのタイプごとにIL-6を産生する細胞が異なることを見いだした。
また、日本人に多いiMCD-IPLでは、XBP1遺伝子が病気の仕組みに関わっていることを世界で初めて明らかにした。以上の結果から、iMCD-IPLでは、XBP1が強く働くことでIL-6が過剰に作られ、さまざまな全身症状を引き起こしていると考えられた。
iMCDの病態解明と根治療法の開発に期待
今回の研究により、iMCDの中でも特に日本人に多いiMCD-IPLの病態に関わる重要な分子が明らかになった。この成果は、病気の詳しい仕組みの解明につながるとともに、将来的には病気を完治させる新しい治療法の開発に役立つことが期待される。
「iMCDはいまだ不明な点が多い疾患だが、本研究の内容をきっかけとして、病態についての理解を深めていきたい」と、研究グループは述べている。
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