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高齢心不全のサルコペニア診断、従来モデルと比べGLISモデルが有用と判明-順大

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2025年10月24日 AM09:20

GLISモデルによるサルコペニア診断は、身体機能低下や退院後の予後と関連するのか?

順天堂大学は10月16日、高齢心不全患者を対象に、近年国際的に提唱された新しいサルコペニア診断モデル「GLIS(Global Leadership Initiative in Sarcopenia)モデル」を用い、サルコペニアと身体パフォーマンスおよび2年間の全死亡との関連を検証し、その結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 循環器内科学の中出泰輔非常勤助教、前田大智非常勤助教、末永祐哉准教授、鍵山暢之特任准教授、藤本雄大大学院生、堂垂大志助教、砂山勉助教、南野徹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Preventive Cardiology」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

高齢化が進むにつれて心不全の患者は増加しており、その予後の悪さが社会的にも大きな課題となっている。特に「サルコペニア」と呼ばれる筋肉量や筋力の低下は、心不全に深く関わり、身体機能の低下や死亡リスクの上昇と結びつくことが知られている。これまで、アジアにおいてはAWGS2019基準に基づき、筋肉量・筋力・身体パフォーマンスを組み合わせてサルコペニアが診断されてきたが、欧米では異なる診断基準が用いられ、診断方法に統一性がなかった。

こうした背景から、各国の専門家による議論を経て、国際的に統一されたサルコペニア診断基準を目指してGLISが組織され、「筋肉量・筋力・単位筋量あたりの筋力」を診断する際の要素とし、従来の診断基準に含まれていた身体パフォーマンスは診断基準ではなく、サルコペニアによって現れる結果として扱うという新たなモデルが提案された。

しかし、この新基準で診断されたサルコペニアが、実際に身体パフォーマンスの低下や予後と関連するか否かは検証されておらず、GLIS内部でも重要課題として残されていた。そこで研究グループは今回、高齢心不全患者を対象に、このGLISモデルによるサルコペニア診断が身体機能の低下や退院後の予後と関連するかを検討した。

サルコペニア疑い・サルコペニアは、独立して身体パフォーマンス低下と関連

研究では、2016年から2018年にかけて、国内15施設において急性非代償性心不全で入院し、独歩退院が可能となった65歳以上の心不全患者を前向きに登録した多施設コホート研究「FRAGILE-HF」のデータを用いて統計解析を行った。解析では、FRAGILE-HFに登録された891人の高齢心不全患者(中央値年齢81歳[74~86歳]、女性41.9%)を対象とした。

GLISモデルに基づいて「サルコペニア疑い」または「サルコペニア」と診断された患者は、歩行速度の低下、5回椅子立ち上がり試験の延長、SPPBスコアの低下、6分間歩行距離の短縮といった身体パフォーマンスの低下を示していた(全てP for trend<0.001)。年齢・性別・併存疾患などを調整した解析でも、サルコペニア疑いおよびサルコペニアは独立して身体パフォーマンス低下と関連していた。

サルコペニア群は独立して死亡リスクの上昇と関連

また、2年間の追跡調査で159人(17.8%)が死亡していたが、サルコペニアの進行に伴って死亡率が段階的に上昇した(log rank検定P<0.001)。Cox比例ハザード解析においても、サルコペニア群は独立して死亡リスクの上昇と関連していた(調整ハザード比3.38[95%CI: 1.74–6.56], P<0.001)。

GLISモデルを組み込んだ予測モデルの方が有意に優れていることを確認

さらに、GLISモデルを従来の予後予測モデル(MAGGICスコア+Log BNP)に追加すると、予測精度においてはAUCは0.679から0.703に改善し、リスク再分類能(NRI)は有意に向上した(NRI 0.324, 95%CI: 0.148–0.499, P<0.001)。また、従来のサルコペニア診断基準であるAWGS2019基準と比較しても、GLISモデルを組み込んだ予測モデルの方が有意に優れており、追加的なリスク再分類の改善(NRI 0.269, 95%CI: 0.141–0.397, P<0.001)を示した。

GLISモデルを用いたリスク層別化による早期介入で、患者のQOLや予後改善に期待

今回の研究で、GLISモデルが高齢心不全患者における身体パフォーマンスの低下や予後不良を的確に反映することが初めて明らかになった。これにより、今後はサルコペニアの国際的な診断基準が見直され、GLISモデルが臨床現場で標準的に用いられる可能性がある。また、GLISモデルは診断に従来必要だった身体パフォーマンスの測定は必要とはされず、生体電気インピーダンスや握力など比較的シンプルな測定で構成されており、外来や入院時の診療に容易に導入できる点が大きな利点である。

「今後は、GLISモデルを用いたリスク層別化をもとに、栄養療法や運動療法などの介入を早期に実施することで、患者のQOLや長期予後の改善につながることが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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