議論が残るビタミンDと認知機能の関係、従来測定法に限界があった可能性
大阪公立大学は9月30日、男女ではビタミンDの利用効率が異なり、さらにビタミンD利用効率と認知機能の関係にも違いがあることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院生活科学研究科の桒原晶子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Nutrition ESPEN」にオンライン掲載されている。

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ビタミンDは生体内でさまざまな働きをもち、その欠乏や不足が骨の健康にとどまらず生活習慣病、認知機能などにも関係することが報告されている。特にヒトを対象とした研究から、ビタミンD欠乏が認知機能の低下やアルツハイマー病(AD)の発症に関係するという報告もある。しかし、認知機能とは関係が見られないとする報告もあり、ビタミンDと認知機能の関係には不明なことが多くある。その理由の一つに、一般的に用いられているビタミンD栄養状態の指標(バイオマーカー)である血中25-hydroxyvitamin D[25(OH)D]濃度が、ビタミンDの生体内での利用効率を反映できていないことがあると考えられている。そこで、ビタミンD代謝の全体像を測定し、ビタミンDと認知機能の関係を明らかにすることを試みた。
65~85歳男女289人対象、ビタミンD利用効率と認知機能の関係を比較分析
今回の研究では、65歳から85歳の男女289人を対象に、アルツハイマー型認知症群(96人)、軽度認知機能障害群(96人)、認知機能正常群(97人)の3グループに分類した。ビタミンDの異化代謝物(24,25-dihydroxyvitamin D【24,25(OH)2D】)を測定し、24,25(OH)2Dを25(OH)Dで割って算出される「ビタミンD利用効率(VMR)」を用いて認知機能との関係を比較分析した。
ビタミンDの異化代謝・認知機能への影響に男女差
その結果、男性と女性とではビタミンDの異化代謝の度合いが異なり、女性は異化代謝が進みにくい可能性があることが明らかとなった。さらに、女性ではVMRが低いと認知機能スコアの低下やアルツハイマー型認知症有病のリスクが高いことが示された。また、男性では異化代謝物である24,25(OH)2Dの濃度が高いと認知機能が低いという結果が得られた。今回の研究成果より、男女でのビタミンD代謝の違いが認知機能と関係すると考えられる。
VMRをバイオマーカーとして用いるなど、臨床応用について検証予定
VMRをバイオマーカーとして用いた場合の病気や健康との関係性は、現在のところ十分に検討されていない。「これまでの研究においても、血中25(OH)D濃度だけではさまざまな病気との関連が認められない事例も少なくないため、今後はVMRの臨床的意義を検証する研究を展開する」と、研究グループは述べている。
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