視野検査は被験者の負担が大きく、長時間の検査は結果の信頼性低下につながる
愛媛大学は9月18日、視野検査を制御する視野検査 AIの「ViFT(Visual Field Transformer)」が、従来の手法と比較して半分以下の時間で同等以上の精度で検査が実施可能であることを示したと発表した。この研究は、同大総合情報メディアセンターの佐伯昌造特定研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Medical Image Analysis」に掲載されている。

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視野はヒトのQOLと密接に関係しており、視野欠損はQOL低下の要因となる。特に、視野欠損が生じる緑内障は、全世界で約7600万人が患っていると予想されており、日本においては40歳以上での有病率は5%と言われている。視野欠損などが生じる疾患において、診断や視野欠損の進行度を評価するために視野検査は用いられ、視野欠損の進行度を適切に評価するために視野検査は定期的な実施が推奨されている。
視野検査はヒトの網膜に光の刺激を与え、主に視野の中心30度の網膜感度を計測する。10~30分程度顔と視線を固定した状態で、光が見えたらボタンを押すという自覚的な作業に基づいた検査だ。そのため、被験者の負担が大きく、長時間の検査は検査の信頼性低下につながる。
視野検査を制御するエージェントの学習フレームワークを確立
研究グループは今回、視野検査で光によって刺激する網膜の位置と明るさを決定する視野検査エージェントを深層強化学習するフレームワークを確立した。このフレームワークは、ニューラルネットワークの検査エージェントのViFTと視野検査シミュレータで構成される。
ViFTでは、Transformerと呼ばれるニューラルネットワークの構造を用いて、今まで人手で設計していた視野の空間的な関係をViFTがデータから学習する。視野検査シミュレータでは、ヒトが光を知覚できるか否か確率的にシミュレーションする。同シミュレータではシミュレーションしている視野に対して、誤回答率の異なる被検者をランダムに割り当て、よりリアルなシミュレーションを行った。
従来の検査アルゴリズムと比較して、半分以下の検査時間で同等以上の検査精度を達成
このようなフレームワークで学習したViFTは、従来の視野検査アルゴリズムと比較して、半分以下の光の呈示回数で検査が実施できた。
検査精度も、誤回答率の異なる幅広い被検者に対して、従来アルゴリズムと同等以上の精度だった。特に、誤回答率の高い被験者においても、ViFTは安定した精度での検査が可能だった。
ViFTにより視野検査の信頼性と精度が向上し、被検者の負担の低減にも寄与する可能性
今回の研究により、ViFTは従来の視野検査アルゴリズムと比較して、半分以下の検査時間で高い精度で安定した検査を実現できることが明らかにされた。「本成果は、視野検査の信頼性と精度を高め、被検者の負担を大幅に低減することに寄与する」と、研究グループは述べている。
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・愛媛大学 プレスリリース


