医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 国内初、臓器灌流保存システムを用いた脳死肝移植に成功-長崎大ほか

国内初、臓器灌流保存システムを用いた脳死肝移植に成功-長崎大ほか

読了時間:約 1分39秒
2025年09月24日 AM09:30

低温酸素化灌流システムを開発、多職種連携で移植成功

長崎大学は9月4日、長崎大学病院で脳死ドナーから提供された肝臓を「臓器灌流システム」で保存した後に肝移植手術を実施し、無事に成功したと発表した。手術は5月に、外科医、麻酔科医、臨床工学士、看護師など多職種によるチーム医療体制のもとで行われた。患者は、術後順調に回復し、無事に退院した。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ドナーから提供された臓器は、移植されるまでの間、最適な状態で保存されることが重要である。従来は、移植用臓器を低温の臓器保存液に浸して保存する方法が主流だった。今回実施された「低温酸素化機械灌流保存法」は、従来の保存方法に加えて、低温の臓器保存液に酸素を混入し、灌流機械を用いて肝臓の血管内を循環させることで、肝臓が保存されている間の臓器の温度を低温に保ちながら酸素を供給する。これにより、細胞のエネルギー維持に必要なミトコンドリアを良好な状態に保つことができ、結果として、組織が良い状態に保たれる。また、移植後に肝臓に血液が再開された際に生じる虚血再灌流障害の軽減も期待できる。この保存方法は、欧米を中心に臨床応用され良好な治療成績が報告されているが、日本国内での実施は、今回が初めてとなる。

今回の移植は、日本医療研究開発機構(AMED)による移植医療技術開発研究事業「肝移植における提供臓器使用率と治療成績向上を目的とした最適な低温酸素化灌流臓器保存技術に関する研究」の一環として、長崎大学病院で実施している特定臨床研究「脳死肝移植における移植用臓器の低温酸素化機械灌流システムの安全性に関する研究」において実施したもの。また、長崎大学と株式会社SCREENホールディングスが2022年10月より開始した共同研究の成果であり、移植医療における大きな前進を示すものである。

提供された臓器をより安全に移植でき、多くの患者の希望に

今回の成果に関する記者レクチャーは7月30日に開催され、長崎大学病院肝胆膵・移植外科の江口晋教授と曽山明彦准教授が開発した肝臓灌流システムについて説明を行った。研究責任者である曽山准教授は「国内初となる移植用臓器に対する低温酸素化灌流保存を用いた脳死肝移植を安全に実施できた。現在実施している特定臨床研究により安全性が証明され、この臓器保存法が確立されることで、提供された臓器がよりよい状態で安全に移植されることにつながり、ドナーとなられた方、そしてそのご家族の意思が尊重され、臓器移植を必要とする患者がより多く救われるようになることを期待している」と述べている。(QLifePro編集部)

 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 人工股関節全置換術、カラー付きHAステムで早期POPFFを抑制-千葉大ほか
  • 過敏性腸症候群、交感神経を介したエオタキシン-1放出が悪化に関与-兵庫医大ほか
  • 働く世代の心房細動、脳梗塞・心不全・死亡リスク上昇と関連-京大ほか
  • 遺伝性胃がんGAPPS、がん特異的KRAS変異を同定-熊本大ほか
  • 解剖学実習における医学生の「相性」を最適化する手法開発-群馬大