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歯科心身症患者の社会経済的背景を調査、現役世代の生活困窮者は1.5%-科学大

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2025年09月11日 AM09:30

歯科心身症の経済的背景は不明瞭、大規模調査で実態解明へ

東京科学大学は9月2日、現役世代の生活困窮者における歯科心身症患者の社会経済的背景を明らかにするため、大規模な後ろ向き調査を実施したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科 歯科心身医学分野の須賀隆行助教と豊福明教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
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歯科心身症は、口腔内の痛みや不快感が長期間続くものの、通常の歯科検査では器質的な原因を特定できない病態を指し、その発症には心理社会的要因が密接に関与していると考えられている。特に歯科心身症と社会経済状況との関連については全体像が不明確であり、海外では一部の事例をもとに「歯科心身症患者全体に生活困窮者が多い」といった誤った印象や偏見(スティグマ)が生じる傾向も見られていた。

しかし、東京科学大学病院の歯科心身症科を訪れる患者の多くは口腔症状を抱えながらも、通常の日常生活を維持できている。一方で、ごく一部には生活保護受給者など生活困窮者も散見される。特に、長引く不況や物価高騰など社会経済的な不安定さが増す昨今、こうした脆弱な層への影響は深刻化することが懸念される。

今回の研究では、大学病院の専門外来における大規模データを用いて、公的扶助を受給している生活困窮者、特に現役世代の生活保護受給者がどの程度の割合を占めるのかを正確に把握し、その特徴を分析することで、患者一人ひとりの多様性に応じた支援体制を検討することを目的とした。

歯科心身症患者の大多数は、問題なく社会生活を維持

研究チームは、2016年4月から2023年3月までに東京科学大学病院の歯科心身医療科を初めて受診した患者のうち、研究参加に同意が得られ、かつデータに不備のない3,685人の診療録を後ろ向きに調査した。

その結果、公的扶助を受給している生活困窮者は全体の2.7%(98人)であり、さらに現役世代(18〜64歳)に限ると1.5%(55人)であることがわかった。これは、歯科心身症患者のうち経済的な支援を必要とする人はごく一部にとどまることを、客観的なデータとして示している。

ごく一部は経済的困窮・精神疾患・社会的孤立が重積、社会的支援が必要

次に、社会復帰によって社会全体に大きな恩恵をもたらす現役世代に焦点を当て、この1.5%にあたる現役世代の生活困窮患者55人について、臨床的特徴や社会的背景を詳細に分析した。その結果、この特定のグループでは、90.9%が現在または過去に精神疾患(うつ病、不安症、統合失調症など)の診断を受けており、74.5%がポリファーマシー(多剤併用)の状態にあった。さらに、81.8%が単身生活、76.4%が非就労状態であり、深刻な社会的孤立と経済的脆弱性が浮き彫りになった。

これらの結果から、歯科心身症患者のごく一部には、高度に複雑な社会的支援を必要とする集団が存在することが明らかになった。

歯科、精神科、地域の福祉機関による包括的なケアモデルが不可欠

今回の研究は、現役世代の生活困窮者における歯科心身症患者の社会経済的実情を、客観的データとして初めて明らかにした。大多数の歯科心身症患者は社会生活を営みながら治療を受けているが、ごく少数ながら公的扶助を受給している現役世代の患者がどのような困難を抱えているのかを可視化した。

さらに、このような歯科心身症患者への支援には歯科、精神科、そして地域の福祉機関が連携する必要があることを示した。今回の成果は、経済的困窮や社会的孤立が深刻な社会課題となる中で、患者一人ひとりの状況に応じた社会的処方も含めた、より効果的で個別化された支援体制の構築を強く後押しすることが期待される。

「今後は、本研究で明らかになった患者の多様性を踏まえ、それぞれの層に適した治療体制や支援プログラムの開発を進める。特に、今回明らかになった患者層に対しては、有効な社会的処方も含め、医科・歯科・福祉(ケースワーカーやNPO)が連携する包括的ケアモデルのあり方を検討する。将来的には、このモデルを全国の医療機関や自治体へと広げ、より望ましい地域医療体制の実現を目指したい」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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