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糖尿病薬メトホルミンが血中金属濃度に影響、臨床研究で明らかに-神戸大

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2025年09月08日 AM09:30

メトホルミンの「金属キレート作用」、ヒトでの影響は不明だった

神戸大学は9月1日、糖尿病治療薬「メトホルミン」が血液中の金属濃度に影響を及ぼすことを、ヒトを対象とした研究により初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 地域社会医学・健康科学講座の小川渉特命教授、坂口一彦特命教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMJ Open Diabetes Research & Care」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
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ヒトの体には、銅・鉄・亜鉛などの「必須微量元素」と呼ばれる金属が存在し、代謝、細胞修復、免疫機能など、さまざまな生命活動において重要な役割を担っている。これらの金属は、過剰でも不足しても健康に悪影響を及ぼすため、体内ではそのバランスが厳密に調整されている。一方で、糖尿病患者ではこの金属バランスが崩れ、血中の銅や鉄の濃度が上昇していることが報告されている。

研究グループは、世界中で最も広く使用されている糖尿病治療薬「メトホルミン」の作用メカニズムの解明に長年取り組んできた。メトホルミンは主に血糖値(血中グルコース濃度)を低下させる薬として知られているが、近年では抗炎症作用、動脈硬化の予防効果、さらには抗腫瘍作用など、血糖降下作用にとどまらない多様な生理作用が注目されている。こうした多面的な効果の背景にある分子メカニズムの解明は、現在も国際的に活発な研究テーマの一つである。

その中で、メトホルミンには「金属キレート作用」、すなわち特定の金属イオンと結合する性質があることが、半世紀以上前から化学的に知られていた。しかし、この結合がメトホルミンの薬理作用にどう関与しているのか、あるいはヒトの体内における金属濃度に影響を及ぼしているのかについては、これまで明確な報告はなかった。

そこで今回の研究では、メトホルミンを服用している糖尿病患者と、服用していない患者との間で、血液中の金属濃度に違いがあるかどうかを比較・検討した。

メトホルミン服用の糖尿病患者、血中の銅・鉄の濃度が低く、亜鉛の濃度が高い

研究グループは、神戸大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科に通院する2型糖尿病患者のうち、メトホルミンを6か月以上服用している93人と、服用していない96人を対象に、血液中の銅・鉄・亜鉛などの金属の濃度および関連指標を比較した。

その結果、メトホルミンを服用している患者では、銅と鉄の血中濃度が低く、亜鉛の濃度が高いことが明らかになった。さらに、年齢、性別、体格指数(BMI)、血糖コントロール状態、腎機能など、金属濃度に影響し得る複数の要因を統計的に調整した後も、この傾向は有意に保たれた。

「金属キレート作用」が血糖降下・合併症予防に関わる可能性

これまでの研究により、糖尿病患者では血中の鉄や銅の濃度が高く、これらの金属を過剰に摂取した動物では糖尿病を発症しやすくなることが知られている。一方、血中亜鉛の低下は高血糖と関連することも報告されている。今回の結果は、メトホルミンが鉄や銅の濃度を下げ、亜鉛の濃度を高めることで、血糖値を改善している可能性を示唆している。さらに、金属濃度の変化は炎症や動脈硬化の発症にも関与することから、メトホルミンが糖尿病合併症の予防にも金属動態の調節を通じて寄与している可能性が考えられる。

体内の金属濃度を適切に調整する、新しいタイプの糖尿病治療薬の開発に期待

今回の研究により、これまで明らかにされていなかったメトホルミン服用による血中金属濃度の変化が、ヒトを対象とした臨床研究で初めて示された。今後は、メトホルミンの服用前後での金属濃度の推移を追跡し、血糖降下の程度や糖尿病合併症の抑制との関連性を詳しく検討することで、金属濃度の変化がメトホルミンの作用機序に関与しているかどうかをより明確に検証していくことが重要だ。

また、今回の研究で観察された血中銅濃度の低下は、メトホルミンの銅キレート作用によって引き起こされている可能性がある。この銅キレート作用は、メトホルミンが持つとされる抗炎症作用や抗腫瘍作用とも関係していることが、近年の研究で報告されている。今後は、動物実験や分子レベルでの解析を通じて、メトホルミンがどのようなメカニズムで金属濃度に影響を及ぼすかを解明することも重要である。

「こうした臨床研究と基礎研究を組み合わせた多角的なアプローチによる研究計画を現在進めている。これらの研究がさらに進展すれば、「体内の金属濃度を適切に調整する」という新たな作用を持つ糖尿病およびその合併症の治療薬の開発へとつながる可能性がある」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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