特定保健指導、行動変容を持続させる支援が課題
北里大学は8月25日、特定保健指導を受けた経験を持つ動機付け支援の参加者を対象に、市販の健康関連アプリの導入支援がアプリ利用率や生活習慣の改善に及ぼす効果を検証した結果を発表した。この研究は、同大医学部の松崎慶一講師、女子栄養大学栄養学部の津下一代教授、名古屋大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科の尾上剛史病院講師、筑波大学体育系の中田由夫教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Occupational Health」に掲載されている。

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日本では、2008年から生活習慣病の予防を目的とした「特定保健指導」が全国的に実施され、体重減少や動脈硬化性疾患のリスク因子の軽減に寄与してきた。しかし、1回のみの面談で行われる「動機付け支援型保健指導」では、持続的な行動変容を支える仕組みが不足していることが課題となっている。さらに、過去に特定保健指導を受けた経験がある人は、再度同様の指導を受けても効果が得られにくいことが報告されている。このため、繰り返し保健指導を受ける人々に対しては、追加的または代替的な支援の手段を導入することが必要と考えられている。
特定保健指導の経験者を対象に、健康関連アプリ導入支援の効果を検証
近年、スマートフォンを活用した健康関連アプリ(mHealthアプリ)が急速に普及し、運動や食事、飲酒、体組成管理などの分野で多様なサービスが利用可能となっている。これらのアプリは、使いやすいインターフェースや継続的な改良により、日常生活で健康習慣を身につけ、行動変容を持続させるための有効な支援ツールとして期待されている。
そこで今回の研究では、過去に特定保健指導を受けた経験があり、標準的な指導のみでは効果が得られにくいと考えられる中年層を対象に、健康関連アプリの導入支援がアプリ利用率や生活習慣の改善に与える影響を検証した。
アプリ導入支援群で高いアプリ利用率、体重や中性脂肪なども改善
特定保健指導を過去に受けた経験を持つ動機付け支援の参加者156人を対象に、アプリ導入支援群(76人)と対照群(80人)を比較した。その結果、3か月後の健康関連アプリ利用率は支援群で68.4%に達し、対照群の40.0%を大きく上回った。また、3か月後の体重では対照群で有意な減少は見られなかったが、支援群で0.85kgの有意な減少を示した。1年後のウエスト周囲長および中性脂肪の改善も支援群で顕著だった。
アプリ活用でより効果的な保健指導、実現に向けた仕組み作りが必要
今回の研究によって、市販の健康関連アプリの活用が従来の動機付け支援の弱点を補い、行動変容や生活習慣病関連指標の改善を促す有効な手段となり得ることが示された。今後は、この研究成果を保健指導の現場に還元し、現場の負担を増やすことなく健康関連アプリ導入を促す仕組みが求められる。
「初回面談時に効率的にアプリ導入を支援できるよう、指導者向けのマニュアルや研修プログラムを整備し、参加者の行動目標やデジタルリテラシーに応じた適切なアプリ選定の手順を普及させることが必要だ。これにより、人的・財政的な制約の中でも質の高い保健指導を持続的に提供できる体制が構築できる可能性がある」と、研究グループは述べている。
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