夜型と腰痛の関連、多様な年齢から構成される日本人勤労者で分析
藤田医科大学は8月21日、日本において夜型の人(活発に活動できる時間が夜に傾いている人)は朝型の人(活発に活動できる時間が朝に傾いている人)に比べて腰痛を有する割合が高いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大整形外科学の藤田順之教授、松永美佳大学院生、公衆衛生学の太田充彦教授、桶川龍世大学院生、精神神経科学の北島剛司教授、名古屋大学大学院医学系研究科国際保健医療学・公衆衛生学の八谷寛教授(藤田医科大学客員教授)らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Spine Journal」にオンライン掲載されている。

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腰痛は日本人が最も多く訴える自覚症状である(2022年国民生活基礎調査)。原因は多岐にわたり、腰に負荷がかかる仕事、肥満、運動不足、喫煙、心理的ストレスなどが挙げられているが、他にも原因がある可能性がある。夜型の人は腰痛を有する割合が高いとするいくつかの報告があるが、これらの研究はある特定の年齢・職業集団や対象者数の少ない集団で行われており、その結果がすべての人々に当てはまるかは不明であった。また、日本人を対象とした研究はこれまでになかった。今回の研究では、多様な年齢層が含まれる日本の労働者集団において、夜型の人が腰痛を有する割合を調査した。
腰痛を有する割合、夜型が朝型より1.46倍高いことが判明
今回の研究では、クロノタイプ(人が1日の中で最も活動的である時間帯)の健康への影響に着目し、日本の公務員4,728人を対象にした横断的分析を行った。腰痛の有無は自己申告にて評価した。クロノタイプは、短縮版朝型・夜型質問票を使用し、朝型、中間型、夜型のどれに当てはまるかを判定した。
はじめに、クロノタイプで最も多かったのは中間型(51%)であった。次いで朝型(38%)と夜型(11%)であった。対象者の30%に腰痛があった。腰痛を有する割合は、夜型の人が朝型の人に比べて高くなった(36.2%対28.7%)。
夜型の人は朝型に比べ運動習慣が少なく、睡眠時間が短いなどクロノタイプだけでなく腰痛と関連するその他の多くの要因の状況も異なっていた。そのため、それら交絡要因の影響を統計学的に除去する多重ロジスティック回帰分析を実施した。その結果、年齢、性別、職業、残業時間、インターネット・メールの使用時間、体格指数(BMI:body mass index)、喫煙、運動習慣、座位時間、睡眠、抑うつ症状という多くの交絡要因を考慮した分析の後でも、夜型の人々は朝型の人々に比べて腰痛を有する確率が1.46倍高いことが判明した(調整済みオッズ比:1.46、95%信頼区間:1.16-1.83)。
クロノタイプ考慮が腰痛予防対策になる可能性
今回の研究により、これまで限られた集団においてのみ確認されていた夜型と腰痛の関連が日本人勤労者でも認められた。また多くの交絡要因を考慮した分析を実施し、夜型と腰痛の間に比較的強い関連があることがわかった。交絡要因に独立した関連が普遍的に認められる事実は、夜型が腰痛の原因として関与しており、今後の腰痛予防対策においてクロノタイプを考慮することになる可能性を示唆している。
「夜型が本当に腰痛の原因か、またそのメカニズムは不明であるので、前向きコホート研究や、時計遺伝子と痛みの関連を明らかにするような生物学的研究を進めていく必要がある」と、研究グループは述べている。
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・藤田医科大学 プレスリリース


