市販の小型風船を膨らませるだけの「パーティーバルーン負荷法」を開発
帝京大学は6月21日、「パーティーバルーン負荷法」と名付けた新しい負荷方法を用いた心エコー図検査による診断手法を開発したと発表した。この研究は、同大医学部内科学講座の片岡明久准教授と、同学部助手の鬼頭健人氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Heart Journal – Imaging Methods & Practice」に掲載されている。
心臓超音波検査ではバルサルバ法(いきみ動作による負荷方法)が古くから用いられてきたが、患者自身が正しい動作を行う必要があり、負荷の強さにばらつきが生じる点が課題だった。それに対し、新たに開発されたパーティーバルーン負荷法は、バルサルバ法の代替として、簡便で安全かつ再現性の高さという特徴がある。
市販の小型風船(パーティーバルーン)を膨らませるだけで胸腔内圧を変化させる簡単な手技であり、風船が膨らむことで負荷のかかり具合を視認でき、患者・検査者双方にとってわかりやすく、安全に実施可能だ。同手法により、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)や卵円孔開存(PFO)といった心疾患の診断精度向上につながることが期待される。
パーティーバルーン負荷法は前負荷の低下を強く誘発、右心房圧上昇も有意に増大
研究グループは、健常者25人を対象としたパイロット研究で、従来のバルサルバ法とパーティーバルーン負荷法を比較した。パーティーバルーン負荷法では、左心室拡張末期径が有意に縮小し、HOCMに関連する閉塞現象を強く誘発する可能性が示された。
また、右心房への静脈還流が増加し、PFO診断で必要な右心房圧上昇が得られる可能性が得られた。その後、12人の追加実験で、HOCMの誘発の標準的な手法とされていた圧測定法と比較し、同等の効果を示しつつ、よりシンプルであることが示された。
多施設共同研究でPFOの検出率が、75.2%から91.5%に向上
さらに、帝京大学臨床研究センター(TARC)支援の下、全国8施設(帝京大学、聖マリアンナ医科大学、旭中央総合病院、国立循環器病研究センター、昭和医科大学、手稲渓仁会病院、近森病院、群馬県立心臓血管センター)・117症例を対象とした後ろ向きレジストリを実施した。
パーティーバルーン負荷法により、43.6%の症例で診断のグレードが上昇した。治療対象となるPFOの検出率が、従来の75.2%から91.5%へ向上。特に重大なシャントを伴う症例の見逃しが減少し、従来法で見逃されていた患者12人が新たに治療対象となった。
高齢者や脳卒中後患者も検査可能、心エコー検査の標準プロトコルへの組み込みに期待
パーティーバルーン負荷法は、特別な装置や高度なトレーニングを必要とせず、地域の病院やクリニックでも導入可能だ。HOCM患者では負荷時の閉塞評価が容易になり、適切な治療方針決定に寄与すると思われる。PFO診断では、隠れPFOの検出精度向上により、脳卒中再発防止につながる可能性がある。
「本手法は、負荷試験が困難だった高齢者や脳卒中後患者も安全に検査が可能。心エコー検査の標準プロトコルへの組み込みやガイドライン改訂への貢献が期待される」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・帝京大学 トピックス


