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植物油に含まれる「ガンマリノレン酸」にスパスム抑制機能があることを発見-東邦大

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2025年05月30日 AM09:10

ガンマリノレン酸がTP受容体の働きを阻害するかをブタの冠動脈で検証

東邦大学は5月21日、植物油に含まれる天然脂肪酸「」(GLA)に、冠動脈のけいれん()を選択的に抑制する作用があることを発見したと発表した。この研究は、同大薬学部薬理学教室の小原圭将准教授、吉岡健人講師、田中芳夫教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Pharmacological Sciences」に掲載されている。


画像はリリースより
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スパスムは、心臓に酸素や栄養を供給する血管が一時的に狭くなる現象で、狭心症や心筋梗塞の引き金になることがある。このような血管の過剰収縮の一因として、トロンボキサンA2(TXA2)などが作用する「」の関与が知られている。

研究グループは今回、植物油(月見草油、ボラージ油など)に多く含まれるガンマリノレン酸が、TP受容体の働きを阻害するか否かを検証するため、ヒトに近い薬理学的性質を持つブタの冠動脈を用いて実験を行った。

ガンマリノレン酸、TP受容体を刺激する物質に誘発される収縮を濃度依存的に強く抑制

その結果、ガンマリノレン酸は、TP受容体の刺激によって引き起こされる冠動脈の収縮を選択的に抑えることがわかった。具体的には、TXA2類似体(U46619)やプロスタグランジンF2αなどのTP受容体を刺激する物質によって誘発される収縮を濃度依存的に強く抑制した。

ガンマリノレン酸がTP受容体を介した収縮に対し選択的に作用

一方で、カリウム(KCl)やアセチルコリン、ヒスタミン、セロトニンなどによる収縮には比較的影響が小さいことが示され、ガンマリノレン酸がTP受容体を介した収縮に対して選択的に作用することが明らかとなった。また、TXA2類似体(U46619)による収縮反応に対するガンマリノレン酸の抑制機序を検討したところ、その抑制はTP受容体に対する競合的拮抗作用により生じることがわかった。

細胞内カルシウム濃度の上昇も抑制、実際の食事やサプリでも効果が得られる可能性

さらに、ヒト細胞を用いた実験により、ガンマリノレン酸がヒトのTP受容体の刺激によって引き起こされる細胞内カルシウム濃度の上昇も抑制することが明らかとなり、ヒトでも同様の作用を持つ可能性が示された。同研究で使用された濃度範囲(10~100µM)は、一般的に食事やサプリメントにより得られるガンマリノレン酸の血中濃度(約100μM)との間に乖離がないことから、実際の食事やサプリメント摂取でも効果が得られる可能性がある。

ガンマリノレン酸による狭心症予防の機能性食品開発や心血管疾患対策への応用に期待

今回の研究は、ガンマリノレン酸がTP受容体を選択的に阻害し、冠動脈スパスムを抑制することを初めて示したものであり、学術的にも臨床的にも重要な知見と言える。

「今後はヒトでの検証や長期的な安全性・有効性の評価が求められるが、将来的にはガンマリノレン酸を活用したスパスムや狭心症予防のための機能性食品やサプリメントの開発、あるいは既存治療との併用による新たな心血管疾患対策への応用が期待される」と、研究グループは述べている。

 

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