世界初、性差着目でクミンの生理的効果を明らかに
東京慈恵会医科大学は5月21日、クミン(Cuminum cyminum L.)の摂取が、性差を伴って体組成および脂質代謝に有益な変化をもたらす可能性があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大リハビリテーション医学講座の鈴木慎助教と安保雅博教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cureus」に掲載されている。

スパイスとして広く用いられるクミンは、伝統医学において消化促進や血糖・脂質代謝改善に用いられてきた薬用植物。近年の研究でも抗酸化作用や抗肥満作用が報告されている。
今回の研究は、性差に着目してクミンの生理的効果を明らかにする世界初の試みだ。同研究では、健康な成人29人(女性16人、男性13人)を対象に、2か月間の非介入観察期間の後、1日2gのクミンパウダーを2か月間摂取、介入前後で体組成分析および血液バイオマーカーを評価した。
男女でLDL-C低下、男性はHDL-C低下、女性は細胞内外水分比低下など
主な研究結果として、女性では、細胞内外水分比(ECW/TBW)の低下(約1.3%の改善)およびPhase angleの上昇(約8%改善)が認められ、筋質の改善が示唆された。男女ともにLDLコレステロール(LDL-C)が有意に低下(平均4.5%低下)した。一方で、HDLコレステロール(HDL-C)は男性でのみ有意に低下(女性の3倍以上の減少幅)する結果となり、性差の存在が示唆された。糖代謝マーカー(HbA1cやインスリン抵抗性指標)には有意な変化は見られなかった。これらの結果から、クミンの健康効果が性別により異なる可能性があり、個別化されたスパイス摂取の応用可能性を示唆している。
今後、大規模・層別化臨床試験で最適なクミン投与量など検討へ
今回の研究はパイロットスタディであり、参加者数やランダム化、対照群の不在といった制限もあるが、クミンの性別に応じた摂取効果を明らかにする上での重要な第一歩となった。今後は、より大規模かつ層別化された臨床試験を通じて、最適な投与量や対象集団の特定を進める予定だ、と研究グループは述べている。
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・東京慈恵会医科大学 プレスリリース