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心不全、高齢患者でCKMオーバーラップと身体機能・長期予後の関連を解明-順大ほか

読了時間:約 2分32秒
2025年05月21日 AM09:20

「CKMオーバーラップ」、高齢心不全患者への影響は?

順天堂大学は5月8日、高齢心不全患者において、「心血管疾患」「慢性腎臓病」「糖尿病」といった疾患が複数重なっている状態(CKMオーバーラップ)が、身体機能の低下や退院後の長期予後の悪化と関係していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科循環器内科学の中出泰輔非常勤助教、末永祐哉准教授、鍵山暢之特任准教授、前田大智非常勤助教、池田吉亮助手、藤本雄大大学院生、井上華子非常勤助手、堂垂大志助教、砂山勉助教、南野徹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Preventive Cardiology」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

心不全は高齢者に多い疾患であり、再入院や全死亡のリスクが高いため、適切な管理が求められる。心不全は多くの合併症を伴う疾患だが、特に心血管疾患、慢性腎臓病、糖尿病の3つが重なる「CKMオーバーラップ」は、病態をより複雑にし、長期予後に影響を与える可能性が指摘されている。しかし、これまでの研究は主に若年者を対象としたものであり、高齢心不全患者におけるCKMオーバーラップの影響は十分に検討されていなかった。

多施設共同研究データを用いて身体機能・長期予後との関連を評価

今回の研究では、高齢心不全患者におけるCKMオーバーラップの有病率を明らかにし、身体機能および長期予後との関連を検討した。

解析には、2016~2018年に日本国内の15施設で実施された高齢心不全患者における身体的・社会的フレイルに関する多施設前向きコホート研究「FRAGILE-HF」、および2018~2019年に4施設で実施された高齢心不全患者の骨格筋評価指標を比較する「SONIC-HF」のデータを用いた。対象は急性非代償性心不全で入院し、独歩退院が可能となった65歳以上の患者で、FRAGILE-HFの1,113人(中央値年齢81歳、男性58.2%)、SONIC-HFの558人(中央値年齢80歳、男性59.3%)のデータを分析した。CKMオーバーラップの有無は、心血管疾患、慢性腎臓病、および糖尿病の診断に基づき分類した。

高齢心不全患者の約50%にCKMオーバーラップ、身体機能の低下と関連

その結果、全体の半数近くの患者が2つ以上のCKMオーバーラップを有しており、特にこれらの患者では、5回椅子立ち上がり試験、SPPB(Short Physical Performance Battery)、6分間歩行距離などの身体機能指標が低いことが明らかになった。

CKMオーバーラップが多い患者ほど予後不良

さらに、2年間の追跡調査の結果、CKMオーバーラップが多い患者では、全死亡および心不全再入院のリスクが高い傾向が確認された。Cox比例ハザードモデルによる解析では、2つ以上のCKMオーバーラップを有する患者は、そうでない患者と比較して、全死亡および再入院のリスクが有意に高いことが示された。

高齢心不全患者のリスク層別化において重要な指標となる可能性

今回の研究によって、高齢心不全患者におけるCKMオーバーラップが身体機能および長期予後と関連する可能性が示された。日常臨床において高齢心不全患者を診る際には、CKMオーバーラップの数を把握し、身体機能低下を早期に特定することが重要になる。今後の研究では、CKMのオーバーラップを考慮した介入戦略を検討し、適切な治療やリハビリテーションを導入することで、心不全患者の長期予後に与える肯定的な影響を明らかにすることが期待される。

「忙しい日常臨床において、高齢心不全患者の身体機能をすべての患者で評価することは困難だが、CKMオーバーラップの評価は比較的簡単に実施できる。特に、オーバーラップ数が多い患者に対して身体機能を測定し、低下が確認された場合には早期に運動療法などの介入を行うことで、さらなる身体機能低下を防ぎ、長期予後の改善につながる可能性がある」と、研究グループは述べている。

 

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