従来の高齢者リハビリは単調で継続困難など課題、ボッチャの身体的・心理的な効果は?
大阪公立大学は4月25日、病院などリハビリに利用可能なスペースが限られている環境でも導入できるよう、XR技術を活用したリハビリプログラム「ボッチャXR」を開発したと発表した。この研究は、同大大学院リハビリテーション学研究科の片岡正教准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS One」にオンライン掲載されている。

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高齢者の健康寿命の延伸には、筋力維持や身体活動の促進が不可欠だ。しかし、加齢に伴って運動意欲は低下しやすく、従来のリハビリプログラムは単調な運動の反復も多いため、高齢患者にとっては運動が継続しにくいという課題があった。そこで研究グループは、誰でも気軽に楽しめるパラリンピック競技の「ボッチャ」に注目。ボッチャは、戦略性があり、高齢者にとっても安全で楽しい活動として注目されているが、身体的・心理的な効果は明らかになっていない。また、病院や施設では実施できるスペースが限られているという問題もある。
健常高齢者でボッチャXR/従来ボッチャ/トレッドミル歩行の効果を比較
今回の研究では、XR(Extended Reality)技術を活用して開発された「ボッチャXR」が、従来のボッチャやトレッドミル歩行と比べて、高齢者にとってどれほど「楽しく」「効果的」な運動であるかを検証した。65歳以上の健常高齢者18人対象に、ボッチャXR、従来のボッチャ、トレッドミル歩行の3条件下で、運動前後の気分変化(POMS2)と下肢筋活動(表面筋電図)を比較した。
ボッチャXR、従来ボッチャと同等にポジティブな気分を促進・トレッドミルより高い活動量
その結果、ボッチャXRは、従来のボッチャと同等にポジティブな気分を促進し、トレッドミル歩行よりも有意にネガティブな気分を減少させることがわかった。また、下肢筋活動も一定の負荷があり、活動性の低い高齢者にとっては筋力増強も期待できる筋活動量を示した。特に大腿四頭筋の活動量はトレッドミル歩行よりも高く、転倒予防や移動能力維持に重要な筋群への効果が期待される。
病院や介護施設などの屋内環境でも導入可能、実用化目指して検証を進める予定
今回の研究により、ボッチャXRは限られたスペースでも実施可能で、身体的・心理的な効果の両面から高齢者のリハビリテーション運動として有効である可能性が示唆された。従来の広いコートを必要とせず、10~15分程度の短時間で効果が期待できる点から、病院や介護施設などの屋内環境での導入が現実的である。今回は即時的な効果の検証であったため、今後は、より多くの高齢者を対象とした長期的な効果の検証とボッチャXRのアップデートを進めていく予定である。ボッチャXRを用いた「楽しい」リハプログラムは、2027年度開設予定の本学医学部附属健康長寿医科学センター病院での実用化を目指している、と研究グループは述べている。
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・大阪公立大学 プレスリリース