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時間栄養学のツール「CNBQ」開発、食行動を簡便に測定-東大

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2025年05月08日 AM09:00

」では食に関する行動を包括的に測定する必要がある

東京大学は4月25日、時間栄養に関する幅広い行動を簡易的に評価することを目的としたツール「」が、11日間にわたって収集された食事日記との比較において、十分な妥当性を有することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科社会予防疫学分野の村上健太郎教授、篠崎奈々助教、佐々木敏名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

近年、時間生物学と栄養学をつなぎ合わせた新しい学術分野として「時間栄養学(chrononutrition)」が注目を集めている。時間栄養学の研究を行うためには、時間栄養に関するさまざまな行動(例えば、最初の食事や最後の食事の開始時刻や摂食頻度、起床時刻や就寝時刻など)を測定する必要がある。しかし、このような行動を包括的に測定可能な簡易ツールは存在しなかった。

そこで研究グループは、時間栄養に関する幅広い行動を簡易的に評価することを目的とした「Chrono-Nutrition Behavior Questionnaire; CNBQ」を開発した。今回の研究では、11日間にわたって収集された食事日記を基準法として、CNBQの妥当性を検証した。

時間栄養の簡易ツール「CNBQ」の妥当性を検証

今回の研究は、2023年2~4月に全国26都道府県で実施された「食の5Wスタディ」に参加した20~69歳の日本人男女1,050人のデータを用いた。

参加者は、まずCNBQで、最近1か月の生活について「仕事や学校のある日」と「仕事や学校のない日」に分けたうえで、以下の時刻を回答した。1)就寝時刻、2)起床時刻、3)朝食の開始時刻、4)午前の間食の開始時刻、5)昼食の開始時刻、6)午後の間食の開始時刻、7)夕食の開始時刻、8)夜間の間食の開始時刻。

次に、参加者は11日間にわたって各食事の開始時刻や起床・就寝時刻を、食事日記に記録した。CNBQと食事日記のそれぞれから、睡眠中央時刻(就寝時刻と起床時刻の中央値)、睡眠時間の長さ、摂食中央時刻(最初の食事と最後の食事の開始時刻の中央値)、摂食時間の長さ、摂食頻度といった時間栄養に関するさまざまな項目を算出した。

従来の食事日記と同等の結果が得られることを確認

その結果、どの項目においても、CNBQから得られた平均値は、食事日記から得られた平均値とかなり類似していた。さらに、CNBQから得られた値と食事日記から得られた値の間のスピアマンの相関係数を計算したところ、多くの項目において十分に高い相関(0.5以上)が観察された。この結果は、「仕事がある日」と「仕事がない日」で、おおむね一致していた。

以上より、CNBQは時間栄養に関するさまざまな項目において、十分に妥当な推定能力を有することが明らかになった。

CNBQを活用した時間栄養に関する大規模研究に期待

今回の研究から、CNBQが時間栄養に着目した研究で必要とされる、さまざまな食行動や睡眠行動を十分な妥当性をもって測定できる世界初の簡易ツールであることが示された。

「CNBQを自由に使用できるように、日本語版と英語版を論文のオンライン補足情報として公開している。CNBQは、時間栄養に関する大規模な観察研究や介入試験で広く活用され、食に関する政策立案に不可欠である信頼できる科学的根拠の構築に大きく寄与することが期待される」と、研究グループは述べている。

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