被扶養者の糖尿病診断有無における世帯主うつ病症診断リスクを健保データで調査
京都大学は4月24日、全国健康保険協会(協会けんぽ)の医療レセプトのデータ(約52万人)および生活習慣病予防健診のデータ(約20万人)を用いて、配偶者の糖尿病によって本人のうつ病リスクが上昇し、配偶者のその後の心血管疾患(CVD)がその一部を媒介することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大白眉センター/医学研究科の井上浩輔特定准教授、近藤尚己教授、矢部大介教授、米国ハーバード大学の古村俊昌博士課程学生、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校の津川友介准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「American Journal of Epidemiology」にオンライン掲載されている。

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糖尿病は日本において有病率の高い生活習慣病の一つ。継続的なケアの必要や重篤な合併症を引き起こすことから、糖尿病は患者の家族のメンタルヘルスにも影響を与えると報告されている。しかし、糖尿病の最も重大な合併症の一つである心血管疾患(CVD)の発症がその影響をどの程度媒介しているのかについて定量化したエビデンスは限られている。
今回の研究では、日本における最大の医療保険者である全国健康保険協会のデータを用いて、52万1,010組の20歳以上の夫婦のペア(平均年齢54.1)を作成。2016~2021年度における最大6年間の追跡で、被扶養者の糖尿病の新規診断の有無における世帯主のうつ病症診断のリスクの変化を比較し、被扶養者のその後のCVD発症(脳卒中、心不全、心筋梗塞)がどの程度そのリスクを媒介するかを調査した。
配偶者の糖尿病で本人のうつ病リスク8%上昇、配偶者のCVDがその一部を媒介
その結果、配偶者(被扶養者)が糖尿病の新規診断を受けた夫婦では、配偶者が糖尿病の新規診断を受けなかった場合と比較して、世帯主(被保険者)がうつ病を発症するリスクが8%高いことがわかった(調整ハザード比[95%信頼区間]=1.13[1.04-1.12])。媒介分析の結果、糖尿病の診断を受けた配偶者のCVD発症は同相関の約22.4%を媒介していた。
CVDリスク高・糖尿病患者家族、包括的なメンタルサポート提供が重要な可能性
配偶者の糖尿病診断はパートナーのうつ病リスクと相関し、同相関は配偶者のその後のCVDの発症によって媒介されている可能性がある。糖尿病を抱える個人のみならず、その家族に対しても適切なリソースを提供することは限られた医療資源を効果的に活用することにつながる可能性がある。特にCVDリスクの高い糖尿病患者の家族に対して、包括的なメンタルサポートを提供することが重要かもしれない、と研究グループは述べている。
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