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精神的健康への悪影響、ペットとの親密なかかわりで軽減できる可能性-麻布大ほか

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2025年04月25日 AM09:20

社会的疎外感を抱える若者を精神的にサポートする方法は?

麻布大学は4月15日、社会的疎外感が高くてもウェルビーイングが高い人は、イヌやネコに対する親密な愛着が高く、心のうちを打ち明けるような関係性を築いていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大獣医学部介在動物学研究室の子安ひかり特任助教、永澤美保教授、菊水健史教授、京都大学医学研究科の村井俊哉教授、東京都医学総合研究所の西田淳志センター長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Psychology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

思春期の精神的健康は、その後の人生全体に影響を与える重要な問題である。特に、社会や文化との価値観の不一致を経験した若者は生きづらさを感じる傾向があり、この時期の精神的健康へのサポートが重要視されている。その方法の一つとして、「伴侶動物との関わり」が広く認識されつつある。

人と伴侶動物の関係は多様だが、多くの場合、人は伴侶動物から無条件に受け入れられている感覚を得ることができる。このような関係性は、個人が社会との価値観の不一致を認識した際にも、精神的健康への悪影響を軽減できる可能性があると考えられる。

中高生を対象にウェルビーイングが高い・低い人の伴侶動物との関わり方の違いに着目

研究グループは今回、思春期におけるイヌやネコとの関わり方が、社会との価値観の不一致とウェルビーイングの関係に与える影響を明らかにすることを目的とした。特に、社会との価値観の不一致を測る指標として文化的離反尺度を用い、文化的離反が高い人の中で、ウェルビーイングが高い人と低い人のイヌやネコとの関わり方の違いに着目した。

高校生と大学生を対象に、イヌやネコとの関わり方、文化的離反尺度、ウェルビーイングに関するアンケートデータを解析。文化的離反とウェルビーイングの平均値に基づき、対象者を4グループに分類した。その中で、文化的離反が高い中でウェルビーイングが高いグループと低いグループを比較し、動物観やイヌ・ネコへの愛着の違いを調べた。

マイノリティ感が高くウェルビーイングが高い人は、伴侶動物に親密な愛着を示す

その結果、文化的離反が高くウェルビーイングが高いグループは、文化的離反が高く、ウェルビーイングが低い群と比較して、イヌやネコに対して高い親密な愛着スコアを示した。さらに詳細な関わり方を調べたところ、「ペットにいつも大事なことや心のうちを打ち明ける」ことが多くなった。動物観においては、環境や野生動物に対する人間中心的な考え方や生態・環境への関心のスコアが高かった。

これらのことから、マイノリティ感が高くウェルビーイングが高い人は、環境や野生動物に対して人間中心的な考え方をし生態・環境への関心が高く、イヌやネコに対して親密な愛着を示していることが判明した。また、大事なことを話したり心のうちを打ち明けたりするような、自己開示の対象として伴侶動物が機能することで、思春期の精神的健康をサポートしている可能性が示された。

イヌやネコが人の精神的健康にもたらすサポートのメカニズム解明を目指す

人間中心的な考え方とイヌやネコに対する親密な愛着は一見矛盾しているようにも思えるが、イヌやネコを相談相手とする関わり方は、イヌやネコを自分の投影あるいは延長として扱い、自分の価値観に従って関係を構築しており、人間中心的であると捉えることもできる。ウチである親密な対象のイヌやネコとソトである環境や野生動物に対する態度を明確化し、多面的に動物から利益を得ている可能性が考えられる。

「今後、イヌやネコに心のうちを打ち明けることによる個人の心理的、生理的変化を調べる実証的な研究やより詳細な動物観の分析を実施していくことで、イヌやネコが人の精神的健康にもたらすサポートのメカニズムの解明が期待できる」と、研究グループは述べている。

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