月経随伴症状の重症度要因、運動習慣のある女性アスリートも同様?
筑波大学は4月8日、月経に関連する困難症状(月経随伴症状)について、運動習慣のない若年女性と運動習慣のある若年女性とで比較検討を行った結果、月経随伴症状の重症度に影響する要因は運動習慣の有無によって異なる可能性があり、個人の生活習慣などに応じた対策の必要性が示唆されたと発表した。この研究は、同大体育系の中田由夫教授、順天堂大学スポーツ健康科学部の町田修一教授、日本女子体育大学体育学部健康スポーツ学科の夏井裕明教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Women’s Health」に掲載されている。

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月経困難症や月経前症候群などを含む月経随伴症状は、月経を有する女性の約90%が経験する症状である。重度の症状を有する場合は、学校や仕事を欠席せざるを得ないなど日常生活にも影響を与え、若年女性の生活の質を揺るがしかねない。また、経済産業省(働く女性の健康推進に関する実態調査2018)によると、月経随伴症状による年間の社会的負担は6828億円と推定されており、重大な社会的課題であることから、対策の必要性が示されている。
これまで月経随伴症状の重症度に影響を与える要因についての検討は多く行われているが、その多くが運動習慣のない女性を対象とした研究であり、運動習慣を有する女性アスリートを対象とした研究はほとんどない。女性アスリートにおいても、運動習慣のない女性と同様に月経随伴症状の発現が認められており、競技パフォーマンスへの影響も懸念されている。一方で、月経随伴症状の重症度には身体活動が関連するといった報告もあることから、運動習慣のない女性の研究結果を女性アスリートに適応できるのか否かは明らかではない。
若年女性・運動習慣の有無で比較検討、重症度/生活習慣などアンケート調査で
そこで、今回の研究では、月経随伴症状の重症度に影響を与える要因を運動習慣の有無によって比較検討した。今回の研究では、2022年6~8月にかけ、日常的に運動を行っていない若年女性(運動習慣のない若年女性)と、大学の部活動などに所属し定期的に運動を行う女子サッカー選手(運動習慣のある若年女性)を対象として、月経随伴症状の重症度と個人特性、生活習慣についてのウェブアンケート調査を実施した。この調査において、月経随伴症状の重症度は、先行研究で報告されている16の症状それぞれの月経前と月経中の重症度を0~3で評価。また、個人特性としては、身長や体重、初経年齢や月経の日数など、生活習慣は、食習慣、睡眠状況、身体活動量、ストレス状況を調査した。回答者428人(運動習慣のない女性192人、運動習慣のある女性236人)のうち、データ欠損等があった198人を除外した224人(運動習慣のない女性99人、運動習慣のある女性125人)のデータを使用し、ロジスティック回帰分析を用いて月経随伴症状の重症度に影響を与える要因を検討した。
運動習慣無しは高いストレスレベルなど、有りは少ない朝食摂取頻度・などが関連
研究の結果、運動習慣のない若年女性では、重度の症状を有することと月経日数が長いこと、ストレスレベルが高いことに関連が認められた。一方、運動習慣のある若年女性では、重度の症状を有することとBMIが高いこと、就寝時間が遅いこと、月経随伴症状を有している、または有する家族がいること、カフェインの摂取があること、週あたりの朝食摂取頻度が少ないことが関連していることが明らかになった。以上のことから、月経随伴症状の重症度に影響を与える要因は、運動習慣の有無によって異なる可能性が示唆された。
生活習慣など個人の特徴に応じた対策の必要性を示唆
今回の研究により、月経随伴症状の重症度に影響を与える要因は運動習慣の有無によって異なる可能性があり、さらに生活習慣などの個人の特徴に応じた対策の必要性が示唆された。今後さらに、同研究で月経随伴症状との関連が認められた項目を改善することで症状が軽減されるか、また、症状が軽減されることで生活の質は向上するのかについて検証を行っていく、と研究グループは述べている。
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・筑波大学 プレスリリース