骨粗鬆症の通院患者532人対象、食生活の充実度と健康状態の関連性を検証
大阪公立大学は1月15日、骨粗鬆症患者を対象に、食事の楽しみや充足感等と栄養素摂取状況、健康状態、主観的健康観との関連性を検証した結果を発表した。この研究は、同大大学院生活科学研究科の松本佳也准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Geriatrics & Gerontology International」にオンラインに掲載されている。

骨粗鬆症の食事療法は、カルシウムやビタミンD、ビタミンKなど、健康な骨を作るために必要な栄養素を過不足なく摂取することを重視して進められている。しかし、骨粗鬆症患者は骨が脆くなっているだけでなく、低栄養状態や、加齢および疾患により虚弱状態にあることが多いため、健康的な日常生活の維持につながる食事療法が必要とされている。食生活が健康に与える影響について、栄養素の摂取量に着目した研究はこれまで多数行われてきたが、食事の楽しみや充足感、食事環境、食の多様性との関連に着目した検証は十分に行われていなかった。
食生活には、生きていくために必要な栄養素を体内に取り込むという生物学的な意義があるほか、食文化や食事の楽しみから満足感を得られる、食事の場でのコミュニケーションが社会とのつながりをもたらすなどさまざまな意義がある。食生活が及ぼす健康への影響について、生物学的な側面からの研究はこれまで多数行われてきたが、それ以外の側面が持つ重要性については十分検討されていなかった。
そこで同研究では、「食事の楽しみ」、「食事の充足感」、「食事環境」、「食の多様性」の4つの側面を評価できる食事関連QOLという概念に着目した。骨粗鬆症の通院患者532人を対象に、食事関連QOLと栄養素摂取状況、健康状態、個人が感じる身体面や精神面などの健康度合いを表す健康関連QOLを調査し、各要因との関連性を検証した。
食事関連QOL「高」は、タンパク質摂取量の多さ/フレイルでない/健康関連QOL高と関連
その結果、食事関連QOLが高いことは、タンパク質摂取量が多いこと、フレイルの状態ではないこと、健康関連QOLが高いことと関連するという結果が得られた。また、食事関連QOLは、健康関連QOLに直接寄与するだけでなく、タンパク質摂取量やフレイルを介して間接的にも寄与する可能性が示唆された。この結果から、食事関連QOLは健康状態に関与していることや、生物学的な側面以外からの食生活と健康との関わりについて一部のデータを示すことができた。
食事関連QOL向上意識で健康的な生活につながる可能性
同研究結果により、普段から食事関連QOLの向上を意識することが健康的な生活につながる可能性がある。また、これまでの食事療法は、対象者の生活環境や個性などに配慮しながら、栄養素摂取量という生物学的側面に着目したものが主流であったが、「食事の楽しみ」、「食事の充足感」といった観点に着目することの重要性を示すことができたと考えられる。「今後は調査対象を骨粗鬆症患者だけでなく、他の病気の患者や健康な人に広げ、食事関連QOLの意義を検証するとともに、どのような要因が食事関連QOLに影響するかを、介入研究も含めて検証していく」と、研究グループは述べている。
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・大阪公立大学 プレスリリース