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腎細胞がん、免疫チェックポイント阻害剤の副作用予測因子発見-名古屋市大ほか

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2025年01月22日 AM09:00

重症の免疫関連有害事象の発症率、腎細胞がんで高い

名古屋市立大学は1月14日、多施設共同研究により、免疫チェックポイント阻害剤を投与した腎細胞がん患者において、好酸球の上昇が重症の免疫関連有害事象(irAE)発症リスクを約6倍増加させることを初めて発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の濵本周造准教授(腎・泌尿器科学分野)、田﨑慶彦研究員(臨床薬剤学分野)、、鳥取大学らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

免疫チェックポイント阻害剤は、がんに対する治療戦略を劇的に変化させた。中でも、腎細胞がんは免疫チェックポイント阻害剤の治療効果の恩恵を受けたがんの1つである。これまで有効な治療法が確立されていなかった腎細胞がんに対して、免疫チェックポイント阻害剤は生存期間を改善させる画期的な治療となった。一方で、免疫チェックポイント阻害剤は全身の臓器に対してirAEを引き起こす。大規模な臨床試験において、免疫チェックポイント阻害剤を受けた腎細胞がん患者の約90%がirAEを発症し、46%の患者が重症irAEを発症したことが報告された。免疫チェックポイント阻害剤を受けた腎細胞がん患者で重症irAEの発症率が高いことが問題となっている。

irAEは免疫賦活に伴う非特異的な免疫反応である。その特性上、irAEが「いつ」「どの」臓器で発生するかを予測することは困難であり、現在まで、irAEの発症を予測・予防する方法は確立されていない。irAEの重症化を防ぐためには、患者自身がirAEの多種多様な症状をセルフモニタリングし、症状を医療者に申告する必要がある。そして、重症irAEを発症した場合は、治療効果が得られていたとしても治療を中止し免疫抑制剤を投与するしか方法がない。重症irAEが発症することにより、患者の生存期間へ悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、重症irAEの発症率が高い腎細胞がんで、重症irAEの発症を予測するためのバイオマーカーを確立する必要がある。そこで今回の研究では、好酸球が重症irAEの発症を予測するバイオマーカーとなるか検討した。

免疫チェックポイント阻害剤治療受けた患者161人、irAE重症度をもとにグループ分け

研究グループは、161人の免疫チェックポイント阻害剤を受けた腎細胞がん患者をirAEの重症度に基づいて、irAEを発症しなかったグループ(非irAEグループ:54人)、軽症irAEを発症したグループ(軽症irAEグループ:48人)、重症irAEを発症したグループ(重症irAEグループ:59人)の3つのグループに分けた。

重症irAE発症患者は軽症irAE発症患者より生存期間短い傾向

まず初めに、3つのグループの生存期間を調べた。その結果、非irAEグループは、軽症irAEグループと重症irAEグループに比べ最も生存期間が短いことがわかった。さらに、重症irAEグループは軽症irAEグループと比べ、生存期間が短くなる傾向にあることもわかった。

治療から2週間後、好酸球が3%より上昇した患者の重症irAE発症リスクは約6倍

次に、免疫チェックポイント阻害剤による治療開始前と治療から2週間経過した時点の好酸球の変動を調べた。その結果、治療開始前の好酸球は、非irAEグループ、軽症irAEグループと重症irAEグループとの間で変化はなかった。免疫チェックポイント阻害剤による治療から2週間経過した時点の好酸球は、非irAEグループと比べて重症irAEグループで上昇していることがわかった。

最後に、重症irAEの発症に対する好酸球の最適なカットオフ値の算出を行った。その結果、好酸球の最適なカットオフ値は3.0%だった。そして、多変量ロジスティック回帰分析では、免疫チェックポイント阻害剤による治療から2週間後に好酸球が3.0%を超えて上昇した腎細胞がん患者において、重症irAEの発症リスクが約6.0倍上昇することがわかった。

好酸球変動のモニタリング、重症irAE発症の早期発見に重要である可能性

今回の研究から、免疫チェックポイント阻害剤を受けた腎細胞がん患者において好酸球の増加が、重症irAEの発症を予測するバイオマーカーとなる可能性を初めて見出すことができた。今回の研究成果は、生存期間に負の影響を与える重症irAEの発症を早期に発見し安全に免疫チェックポイント阻害剤を継続するために、好酸球の変動をモニタリングすることの重要性について新たな根拠を提供する。

近年、免疫チェックポイント阻害剤が保険適応となるがん種は拡大し続けており、多くの診療科で治療を行っている。そのため今回の研究の成果は、多くの診療科や臨床現場に応用できる可能性を秘めている。現在までに、好酸球がどのようにirAE発症に関与しているか詳細なメカニズムはわかっていない。そのため、研究グループはirAE発症メカニズムの解明を目指した基礎研究を行っている。「最終的には、好酸球を標的としたirAE発症を予防する新規治療薬の創出を目指している」と、研究グループは述べている。

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