医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 日本人は社会的支援を求めにくいと判明、困難は行動の報いという考え方が影響-名大

日本人は社会的支援を求めにくいと判明、困難は行動の報いという考え方が影響-名大

読了時間:約 2分44秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2025年01月08日 AM09:00

」の求めやすさは文化によって異なる

名古屋大学は12月24日、日本と米国の一般人参加者を対象とした研究により、精神的に苦しんでいるときの社会的支援(他者からの助けや感情的な支え)の求めやすさに文化差があり、共感や他者の利他的な行動への期待が関与していることを新たに発見したと発表した。この研究は、一橋大学社会科学高等研究院の鄭少鳳(テイ・ショウホウ)講師(研究当時 名古屋大学大学院情報学研究科・博士後期課程学生)と名古屋大学大学院情報学研究科の石井敬子教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Emotion」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

社会的支援はストレス軽減や精神的・身体的健康に重要な役割を果たすが、求めやすさは文化によって異なる。例えば日本人を含む東アジア人は欧米人よりも、社会的支援を求めることに消極的であることが知られている。

これまでの研究は対人関係の調和を重視し、他者に負担がかかることによってその調和が壊れることの懸念といった文化的な特徴に注目したものだった。しかし研究グループは、このような関係懸念に加え、共感的関心(困っている人への同情や思いやり)による影響について着目してきた。

米国人は共感的関心や他者の利他的な行動への期待高、高いと支援も求めやすい

今回の研究では、3つの日米比較研究を通じて共感的関心による効果を確認するとともに、共感的関心が高いことによって他者の利他的な行動への期待も高くなり、それが社会的支援の求めやすさを促す可能性、および東アジアに代表される集団主義文化において顕著な「社会規範や秩序を逸脱・違反した報い」として困難や精神的苦痛を理解する傾向が共感的関心の文化差を説明する可能性について検討した。

実験1では、527人の米国人参加者と522人の日本人参加者に3つの尺度(共感的関心、他者の利他的な行動への期待、ストレス時に社会的支援を求める程度)に回答してもらった。実験2では、398人の米国人と381人の日本人に対し、共感的関心や他者の利他的な行動への期待に加え、ストレスの高い出来事から成る5つの仮想状況における社会的支援の求めやすさ、さらには社会規範や秩序を逸脱・違反した報いとして困難や精神的苦痛をどの程度理解するかを尋ねた。

いずれの実験でも、日本人と比べて、米国人は共感的関心や他者の利他的な行動への期待が高く、それらが高いほど社会的支援も求めやすいことがわかった。また、米国人と比べて、日本人は「社会規範や秩序を逸脱・違反した報い」として困難や精神的苦痛を理解しやすく、そしてそのような理解をしやすい人ほど共感的関心が低くなっていた。

「共感的関心を高める課題」を受けると、社会的支援を求めやすく

さらに201人の米国人と214人の日本人が参加した実験3において、共感的関心を高めるような課題(他者に対して同情や思いやりを強く感じた過去の経験を思い出して、その内容を記載してもらう内容)を受けた約半数の参加者は、文化にかかわらず、残りの統制群の参加者よりも社会的支援を求めやすくなった。

社会的支援を求めるための介入策への寄与に期待

日常生活において直面する困難や精神的苦痛、そしてストレスフルな出来事に対して適切に対処することは、心身の健康を維持する上で重要だ。その対処法の一つとして、他者からの励ましやアドバイスに代表される社会的支援がある。しかし、その支援の求めやすさは、人々が暮らす文化環境における関係性のあり方に大きく影響を受ける。関係調和を重視する東アジア文化の特徴を背景に、従来指摘されていたのは「関係懸念(他者に支援を求めることの負荷によりその対人関係が壊れてしまうことの恐れ)」による関与だった。

今回の研究では、これに代わる新しい可能性として困っている人への同情や思いやりといった共感的関心による効果を検討。その結果、共感的関心や他者の利他行動への期待が日本において低いこと、共感的関心の低さの背景に困難や苦痛に対する文化特有の解釈が関連していることが明らかにされた。同研究の意義は理論的な新しさに加え、共感的関心を高めるような介入策が社会的支援の要請を容易なものとし、その結果、心身の健康維持に寄与する可能性を示した点も挙げられる。

「本成果は、文化と共感が関わる支援行動のメカニズムの理解を深め、社会的支援を求めるための介入策に寄与することが期待される」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 脂肪細胞の体内時計機能低下がFGF21を介して肥満を促進-日大
  • IVLBCL初の臨床試験、中枢神経の病変抑制と長期有効性を確認-名大ほか
  • 大腸がん再発予測に、ctDNAを用いた個別化血液検査が有効と判明-岩手医科大ほか
  • 脳卒中患者、半側空間無視が改善後もHyperschematiaが継続する可能性-畿央大
  • 【インフル流行レベルマップ第6週】報告数減、36都府県で注意報・警報解除-感染研