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統合失調症の「社会認知」に基づく臨床的サブタイプ分類に成功-東邦大ほか

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2024年11月08日 AM09:00

統合失調症患者の社会認知における「主観的困難」と「客観的能力」の関連は不明

東邦大学は10月30日、社会認知の主観的困難と客観的能力に基づく統合失調症患者における臨床的サブタイプを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部 精神神経医学講座/社会実装精神医学講座の根本隆洋教授、北海道大学大学院医学研究院 神経病態学分野精神医学教室の橋本直樹准教授、同教室の大久保亮助教、国立精神・神経医療研究センター病院 司法精神診療部の久保田涼太郎医員、精神診療部/精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部の池澤聰客員研究員らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Schizophrenia」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

統合失調症患者では、就学や就労などの社会生活における困難が広く認められ、これらの改善が治療における重要な課題の一つとなっている。社会生活に影響を与える要因として、さまざまなものが報告されてきたが、近年では対人関係の基礎となる能力である「」に注目が集まっている。社会認知には相手の顔や声色から感情を読み取る能力や、相手の意図を推測する能力などが含まれる。

統合失調症の特徴として、患者が自身の症状や機能低下について正確な自己評価をできていない場合があることが知られている。社会認知の低下は統合失調症の症状の一つとして報告されているが、生活場面において社会認知が関わる困難の自覚の程度(主観的困難)と実際の能力低下(客観的能力低下)の程度の関連については、これまで明らかではなかった。

臨床的サブタイプの解明を目的に、統合失調症患者131人を調査

研究グループは今回、社会認知に関する主観的困難の程度と客観的能力の程度について、その一致/不一致を探索し統合失調症患者における臨床的サブタイプを明らかにすることを目的として、131人の統合失調症患者を対象に調査を行った。

社会認知の客観的能力を測定する方法として、社会認知の代表的な下位領域である、感情認識、心の理論、原因帰属バイアス、社会知覚・知識を網羅した4つの神経心理学的評価尺度を使用した。これらの尺度は、同研究班により尺度の妥当性や信頼性が検証され、日本における使用を推奨されたもの。社会認知に関する主観的困難を評価する方法として、同様の4つの領域を網羅したASCo(Self-Assessment of Social Cognition Impairments)というアンケートの日本語版を用いた。

社会認知に関し「能力正常群・低知覚群・高知覚群」の臨床的サブタイプ分類に成功

クラスター分析の結果として、統合失調症患者は社会認知に関して、3つの臨床的サブタイプに分けられた。

49.6%の患者は「能力正常群」となり、客観的能力はほぼ正常で困難も感じていなかった。32.8%の患者は「低知覚群」となり、客観的能力の顕著な低下が認められるが困難は感じていなかった。17.6%の患者は「高知覚群」となり、客観的能力が一定程度低下し困難を顕著に感じていた。能力正常群は、幻覚や妄想などの陽性症状や意欲低下などの陰性症状も最も軽度だった。社会生活における障害の程度は高知覚群で最も重度だった。

社会認知に基づく臨床的サブタイプを念頭に置き、個々人に適した治療内容の検討が重要

これらの結果から、例えば診察時の問診において、社会認知に関する困難を持つことが語られた際は実際に能力の低下を認めている可能性が高く、治療プログラム(社会認知ならびに対人関係のトレーニング;SCITなど)の実施が有効な場合がある。一方、問診において社会認知に関する困難感が乏しい際は、能力の低下が無い場合と実際は認めている場合に分かれるため、注意が必要と考えられる。また、そのような場合は患者家族など、身近な人々からの聴取や評価尺度による社会認知の能力測定が有効と考えられる。

「診察場面においては、社会認知に基づく臨床的なサブタイプが存在することを念頭に置き、患者個々人に適した治療内容の検討が望まれる」と、研究グループは述べている。

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