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「シミュレータ酔い」、体験後に1時間の休憩を取ることで低減-慶大ほか

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2024年09月27日 AM09:30

ドライブシミュレータ、シミュレータ酔いが活用の妨げに

慶應義塾大学は9月24日、VR(Virtual Reality)バイクシミュレータを用いた実験を行い、主観的な「シミュレータ酔い」が消えたと判断した直後に再度シミュレータを体験した場合には酔いは低減しなかったのに対し、1時間の休憩を挟んだ場合には酔いの低減が生じることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大文学部の板口典弘准教授、静岡大学情報学部の宮崎真研究室、ヤマハ発動機の三木将行氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ドライブシミュレータを利用すると、搭乗者の安全を保ちながら運転のトレーニングを行ったり、開発機に搭乗した利用者の挙動を評価したりすることが可能だ。しかし、しばしばシミュレータ酔いが生じ、ドライブシミュレータの活用を妨げてきた。シミュレータ酔いの対策の一つとして、繰り返し体験による順応(adaptation)を利用した手法が存在する。順応による酔いの低減は、複数回同じ状況を体験するだけで引き起こすことができる。そのため、追加の装置やプログラムを必要とすることなく、コストを抑えた酔いの低減が可能だ。しかし従来の研究では、シミュレータ体験の間に1日以上の時間間隔を空けた順応効果しか示されていなかった。もし、さらに短い時間間隔で順応が生じることが確認できれば、より効率的なシミュレータ酔いの低減手法の提案につながる。そこで研究では、VRバイクシミュレータを用いて、数分~1時間の時間間隔で酔いを低減することができるかどうかを調べた。

シミュレータ映像体験後の休憩時間の取り方によって、酔いが低減されるか検討

参加者は、実験室内でバイク型筐体に乗った状態でヘッドマウントディスプレイを装着、バイクに乗って左右に蛇行するシミュレータ映像を体験した。各参加者は、6分間のシミュレータ映像を、休憩を挟んで2回体験した。この休憩時間の長さについて、参加者を3群に分けた。6分間の群、主観的酔いがなくなるまでの群、1時間の群で、各群20人とした。参加者はシミュレータ映像を見ている最中と休憩中、さらに2回目の映像体験後6分間において、主観的な酔いの程度を20段階(FMS:Fast Motion Sickness scale)で、口頭で報告した。FMSスコアは、0が全く酔っていない状態、20がひどく酔っている状態を表す。

1時間休憩群で、1回目より2回目のFMSスコア低値

実験の結果、6分休憩群では1回目よりも2回目のFMSスコアが大きくなった。これは、6分間の休憩では、1回目の酔いが2回目に持ち越されてしまったためだと考えられた。酔いが回復するまで休憩を取った群では、FMSスコアは増大も低減もしなかった。最後に、1時間休憩群では、1回目よりも2回目のFMSスコアが低くなった。この結果は、1時間の休憩を取ることによって、順応による酔いの低減効果が生じたことを示唆している。同時に、主観的な酔いが回復したとしても、それ以上の休憩をとらなければ、順応による酔いの低減効果は生じない可能性も示された。

車や船などの乗り物酔い低減への応用も期待される

1時間という比較的短い休憩時間であっても、2回目のシミュレータ酔いを低減できることを、統制された実験環境下で示した。1日未満の時間間隔でシミュレータ酔いに対する順応が生じるという結果は、これまで示されていない新たな知見だ。「この成果は、短時間でシミュレータ酔いを抑止あるいは緩和するプログラム開発の基礎知見となることが期待される。また、ドライブシミュレータだけでなく、現実場面における自動車や船舶といった乗り物酔い、ゲームや教育コンテンツなどの幅広いVRシステムの利用に伴う映像酔いの問題の解決にも応用可能だ。学術的には、なぜ酔いが発生するのかという問題に対して、多感覚知覚学習という観点から新たな視点をもたらす議論も行うことができた」と、研究グループは述べている。

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