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アイトラッキングを利用した視野検査GAPが緑内障の早期発見に有効と判明-京大ほか

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2024年06月06日 AM09:30

既存のHFAと新たに開発されたGAPの性能を比較

京都大学は5月31日、同大大学院医学研究科眼科学教室と株式会社ファインデックスの共同研究により開発された、新しい測定原理によるヘッドマウント型の自動視野計(Gaze Analyzing Perimeter、GAP)と、現在最も一般的に使用されているハンフリー自動視野計()の結果を比較し、GAPの性能を評価した結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科眼科学 辻川明孝教授、三宅正裕同特定講師、国際高等教育院データ科学イノベーション教育研究センター 田村寛教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Ophthalmology Glaucoma」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本緑内障学会の調査によれば、40歳以上の約5%が緑内障を発症しており、その90%が未診断であると報告されている。視野検査は、緑内障の診断とモニタリングにおいて特に重要な検査だ。これまでの自動視野計は、「検査中に中心の1点を見続けながら、回りに提示される光が見えたらボタンを押下する」という作業を繰り返すものだった。この測定方法はシンプルで、開発者目線では実装しやすい反面、患者にとっては中心の1点を見続けることがつらい場合もあり、また、見えたかどうかの判定が患者の自己申告によるため、必ずしも客観性が高くないという問題もあった。

これに対し、京都大学眼科とファインデックスの共同研究により開発されたGAPは「見える視標に対しては視線が直線的に移動するのに対して、見えない視標に対してはそのような移動がみられない」ことを利用することで、ボタンの押下ではなく、アイトラッキングによって得られた視線の動きをもとに、人工知能によって見えていたかの判定を行う。このため、患者は中心の1点を見続ける必要がなくボタン操作も不要で、楽に検査を受けることができる。また、視線の動きから判定を行うため事後の検証も可能で、検査結果の客観性・透明性が高いという点もポイントとして挙げられる。GAPはヘッドマウント型で400gと軽量なので持ち運びが容易で、暗室を用意せずともベッドサイドで実施可能だ。

このようにGAPは実用性の高い自動視野計だが、これまでハンフリー自動視野計との性能の比較は論文として報告されていなかった。

GAPは、視野障害が軽度の患者の検査時間短縮に有効

そこで研究グループは、2022年12月~2023年7月にかけて京都大学医学部附属病院眼科を受診しHFAを行う患者のうち、対象となった47人(47眼)を分析した。

HFAとGAPの検査結果の相関係数は0.811と良好だった。検査時間には統計的な有意差はなかったが、200秒以内に完了した検査はGAPグループでのみ観察され(23.4%)、そのような患者は視野障害の程度が軽度の人に限られていた。このことから、特に視野障害の程度が軽い患者において、GAPは検査時間の短縮に優れていることが判明した。

GAPの計測値がHFAの計測値よりも正しい可能性

さらに、HFAの結果とGAPの結果に齟齬がある検査点について視線の動きを事後的に検証したところ、70.2%は視標に対して直線的な移動をしており、これらの検査点においては、実際に見えている(HFAの計測値よりもGAPの計測値の方が正しい)可能性が高いことが明らかになった。

視野障害を来す疾患のスクリーニングが容易になり、早期発見・治療につながる可能性

GAPがHFAと遜色ない性能を有していることから、自動視野計として今後普及していくことが考えられる。GAPは軽量・簡便のため健康診断施設や訪問診療・遠隔診療でも取り入れやすく、視野検査が一般的となることにより、緑内障の早期発見・早期治療が進み、緑内障による失明を減らすことが期待される。今後ソフトウェアを充実させることで、視野検査以外にも瞳孔径の計測、眼球運動評価、認知機能評価など、さまざまな眼科検査あるいは眼科以外の検査への拡張も見込まれ、人工知能を用いた診断支援との組み合わせにより、眼科医療にイノベーションを引き起こす可能性もある。

「本機器が普及することで、緑内障をはじめとした視野障害を来す疾患のスクリーニングが容易となり、早期発見・早期治療につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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