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てんかん焦点切除手術の適応、世界共通で簡便に評価可能な指標開発-京大

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2024年03月27日 AM09:00

複数要素が考慮される焦点切除手術の実施、国内外での判断ルールは多様

京都大学は3月19日、てんかん患者において焦点切除手術が必要かどうかを簡単に評価する「」(Specific Consistency Score:)を発案したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の池田昭夫教授、下竹昭寛病院講師、戸島麻耶客員研究員らの附属病院てんかん診療支援センター研究グループによるもの。研究成果は、「Epilepsia」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

てんかんは、あらゆる年代に起こる脳の病気で、100人に1人、すなわち約5千万人の患者が世界中にいる。てんかん患者のてんかん発作を抑える治療の基本は抗発作薬の内服である。約70%の患者では内服治療で発作を抑えることができるが、残りの約30%の患者では内服治療のみでは発作を抑えることができず、難治てんかんと呼ばれる。一部の難治てんかん患者ではてんかん発作を生じさせる脳の領域(てんかん焦点)を外科治療で取り除く焦点切除手術により、てんかん発作をなくす、あるいは減らすことができる。切除する領域を正確に定めるために、頭の中に電極を留置して脳波を記録してから手術を行うこともある。

同大医学部附属病院では1990年代初頭から難治焦点てんかんの手術治療を続けてきたが、各患者に手術が必要かどうかは発作のタイプや脳波、脳画像など多くの要素が考慮され、てんかんを専門とする多科・多職種が集まって話し合う会議で決めている。この手術適応の決め方について、日本国内や世界のルールには多様性がある。

8項目の症状・検査所見から焦点切除手術の必要性を簡便に評価するスコア開発に成功

研究グループは、てんかん患者において、焦点切除手術が必要かどうかをわかりやすく簡便に評価するための特異的一貫性スコアSCSを発案した。そして、このスコアがどれくらい役立つかを調べた。

今回の研究は、同病院で2011年から2022年にかけて、難治てんかんで焦点切除手術が検討された患者131人を対象にした。SCSは、まず候補となる焦点を想定して、計8項目の臨床症状・検査所見(熱性けいれん既往、発作型、MRI、FDG-PET、脳波、神経心理)の特異度の高い結果のみに注目して、候補となる焦点の側方性・脳葉とそれぞれ一貫していれば加点し、合計した(各項目最大1or2点、合計最大13点)。その後、SCSと(1)焦点切除手術を行ったかどうか、(2)焦点切除手術例のてんかん発作改善率、(3)手術前に想定した候補焦点と電極留置例で決定した焦点との一致性、との関連を解析した。

得られた結果は以下の通りである。(1)焦点切除術を行った患者では、行わなかった患者よりもSCSが高くなった。(2)焦点切除術後に発作が大きく改善した患者は、改善が少なかった患者と比べてSCSが高くなった。(3)手術前の候補焦点と、電極留置で決定した焦点が一致した患者では、一致しなかった患者よりもSCSが高くなった。この結果から、SCSは難治てんかん患者に対して焦点切除手術を行うか判断するための簡便で適切な指標を提供し、てんかんを専門とする・しないにこだわらず、世界中の多くの施設において簡単に利用できることが示された。

SCSの有用性、今後さらに検証される予定

研究グループが提案したSCSによって、難治てんかんの焦点切除手術の適応が簡単に評価できることが示された。「今後、国内・海外の多施設により大規模な研究や検証が行われることで、SCSの有用性をさらに検証し、信頼性を高めていく必要がある」と、研究グループは述べている。

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