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発作性夜間ヘモグロビン尿症、補体(C5)阻害剤と併用投与する薬剤「ボイデヤ(R)」の国内初の承認を取得-アレクシオンファーマ

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2024年03月12日 PM02:00

アンメットメディカルニーズに対する個別化医療に期待

アレクシオンファーマは、(PNH)成人患者向け治療薬として「ボイデヤ(R)(一般名:ダニコパン)」の製造販売承認を2024年1月18日に取得。同年2月15日に『新たな治療薬「ボイデヤ(R)」、C5阻害剤への国内初の併用薬が変える「(PNH)」治療の展望』と題したメディアセミナーを開催した。西村純一氏(大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学 招聘教授)より「(PNH)を取り巻く環境と治療の現状と課題」、小原直氏(筑波大学 医学医療系 医療科学 教授)より『国際共同第Ⅲ相試験(ALPHA 試験)の結果に基づいた「ボイデヤ(R)」への今後の期待』と題した講演が行われ、PNH患者へのアンメットメディカルニーズに対する個別化治療への展望について意見が述べられた。

血管外溶血(EVH)改善に対応

PNHは国の指定難病であり、2021年度の医療受給者証保持者数は959人の希少疾患である1)。血管内の赤血球破壊[血管内溶血(IVH)]と白血球および血小板の活性化を特徴とし、血栓症を惹起することにより臓器障害や早期死亡に至る可能性があるが2-4)、補体(C5)阻害剤[(R)(一般名:ラブリズマブ)、(R)(一般名:エクリズマブ)]により補体C5を阻害し終末補体を抑制することで症状および合併症を軽減し、生存率への影響が期待できる4-7)。しかし、C5阻害剤での治療中にEVHが生じる患者が約10~20%出現し、持続的な貧血症状が生じたり定期的な輸血が必要になることがある8-13)。ボイデヤ(R)は、この10~20%の患者にC5阻害剤と併用して投与する薬剤である。

西村氏は、PNHの現状と今後の課題について講演し、3大症状である溶血、血栓症、骨髄不全について述べ「骨髄不全以外のPNHの諸症状はすべて溶血が関わっている。PNH治療の中心は如何に溶血を止めるか」であると見解を述べた。また、IVHは貧血や疲労感などの症状だけではなく、血栓症、腎障害、肺高血圧症といった生命予後に関わる合併症の要因となり、EVHは貧血や倦怠感、黄疸、胆石の要因となることも示した。


西村純一氏(大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学 招聘教授)

国際共同第Ⅲ相試験(ALPHA試験)の結果より

ALPHA試験では、ヘモグロビンが9.5g/dL以下かつ網状赤血球数が120×109/L以上と定義した臨床的に問題となるEVHを示すPNH患者を対象に、ユルトミリス(R)またはソリリス(R)にボイデヤ(R)を併用した際の有効性および安全性を評価した8)。小原氏は試験の詳細について述べ、同試験の結果、ユルトミリス(R)またはソリリス(R)投与下でボイデヤ(R)を追加経口投与することにより、IVHの抑制を維持したままEVHに伴う貧血の改善・抑制が可能である点を示した。投与12週(二重盲検期)において、主要評価項目であるヘモグロビン濃度のベースラインからの変化量についても、プラセボ群に対してボイデヤ(R)併用群で改善効果が投与開始早期より確認され、投与期間中長期にわたり維持されたことも明示した8)。

また、PNH患者に対するユルトミリス(R)とボイデヤ(R)併用の症例を提示し、両剤併用投与後、ヘモグロビン濃度が上昇し、輸血を脱却したとの結果を報告。ボイデヤ(R)を使用する患者の徴候としては、活動性が高い患者であるが貧血が残存している、輸血が必要である、EVHを合併している等を挙げた。本症例ではコロナワクチン接種や感染症等の際にもIVHは起こらず、「ユルトミリス(R)を使用し、上乗せとしてボイデヤ(R)を併用するため、IVHの抑制に対してセーフティネットとして機能したのではないか」との見解が示された。


小原直氏(筑波大学 医学医療系 医療科学 教授)

(QLifePro編集部)


1) 難病情報センター: 夜間ヘモグロビン尿症.
https://www.nanbyou.or.jp/entry/3783
2) Brodsky RA: Blood. 2014;124(18):2804-2811.
3) Griffin M, et al: Haematologica. 2019;104(3):e94-e96.
4)Hillmen P, et al: N Engl J Med. 2006;355(12):1233-1243.
5) Lee JW, et al: Expert Rev Clin Pharmacol. 2022;15(7):851-861.
6) Kulasekararaj AG, et al: Eur J Haematol. 2022;109(3):205-214.
7) Kulasekararaj AG, et al: HemaSphere. 2022;6(Suppl):706-707.
8) Lee JW, et al: The Lancet Haematology. 2023;10(12):E955-E965.
9) Kulasekararaj AG, et al: European Hematology Association (EHA) Hybrid Congress. 8-11 June 2023; Frankfurt, Germany. Abs PB2056.
10) Brodsky RA: Blood. 2014;124(18):2804-2811.
11) Kulasekararaj AG, et al: Blood. 2019;133(6):540–549.
12) Lee JW, et al: Blood. 2019;133(6):530-539.
13) Röth A, et al: ECTH 2019. Glasgow, UK ed. Glasgow, UK2019.

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