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入院中の亜急性期脳卒中患者、身体活動量「少」ほど疲労感「強」の傾向-神戸大ほか

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2024年01月15日 AM09:10

約3~7割の脳卒中患者が疲労感を有する

神戸大学は1月11日、入院中の亜急性期脳卒中患者を対象に、入院中の疲労感と身体活動量の関連性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院保健学研究科博士前期課程学生(伊丹恒生脳神経外科病院リハビリテーション科理学療法士)の槇原史乃氏、金沢大学融合研究域融合科学系の金居督之准教授、神戸大学大学院保健学研究科の井澤和大准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Topics in Stroke Rehabilitation」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

脳卒中患者の約3~7割が、疲労感を有していることが知られている。この疲労感の原因ははっきりとわかっていないが、高齢であることや、うつや不安などの心理的要因、不眠などが関連していることが報告されている。脳卒中後の疲労感は長年にわたって続き、中にはその影響により仕事や外出などを制限しなければならない人もいる。脳卒中患者にとって疲労感は、生活の質を低下させる危険因子であると言える。また、脳卒中を発症すると、中枢神経障害などの影響により、身体活動量が低下する。亜急性期脳卒中患者では、入院中の身体活動量が少ないほど、将来的な歩行能力や日常生活の自立度が低かったことが報告されている。そのため、身体活動量を減少させる因子を特定し、その管理を行うことで身体活動量を増やしていく必要がある。臨床現場では患者の疲労感が強く、リハビリテーションなどの活動を行うことが出来ないといった場面が度々ある。しかし、脳卒中患者の疲労感と身体活動量の関連は明らかになっていなかった。

そこで研究グループは今回、入院中の亜急性期脳卒中患者の疲労感と身体活動量の関連を明らかにすることを目的に研究を進めた。

亜急性期脳卒中患者85例対象、入院中の疲労感と身体活動量の関連を解析

今回の研究では、2021年7月~2023年5月に伊丹恒生脳神経外科病院リハビリテーション病棟に入院した、244例の亜急性期脳卒中患者を対象とした。失語症や認知症を有する患者や、入院前に既に要介護状態だった患者、データ欠損例などを除外した85例を最終解析対象者とした。疲労感の評価には、Fatigue Assessment Scale(FAS)を用いた。また、身体活動量の評価には3軸加速度センサー搭載型活動量計(Active style Pro HJA750-C、オムロン社製)を用い、入院中の疲労感と身体活動量の関連を統計学的に調査した。

入院中の疲労感は座位行動時間と関連

研究の結果、身体活動量に影響する年齢、脳卒中重症度、バランス機能などの影響を取り除く統計解析を行った場合も、入院中の疲労感は座位行動時間と関連していた。座ったり横になったりして過ごしている時間が長く、身体活動量が少ない人の方が、疲労感が強い傾向にあった。疲労感と軽強度活動時間、中高強度活動時間に関連はなかった。

脳卒中患者は疲労を感じると座ったり、横になったりして休憩することが多いと言われている。しかし、今回の研究結果から、入院中の亜急性期脳卒中患者が疲労感を感じ、長時間座ったり、横になったりして休憩したとしても、疲労感が軽減しない可能性が示唆された。

患者の身体活動量増加方策として「疲労感の管理」が必要な可能性、今後は管理方法を検討

同研究の新規性は、入院中の亜急性期脳卒中患者において、疲労感が強ければ強いほど、座ったり横になったりして過ごしている時間が長いということを明らかにしたことだ。一日の中でそのような時間を減らし、立ったり歩いたりする時間を増やすことは、身体機能の改善や、病気の再発予防の観点からも重要だ。同研究の結果は、入院中の座っている時間・横になっている時間を減らすためには、患者の疲労感の強さを医療スタッフが把握し、軽減するよう働きかけることが必要であることを示した。

今回の研究成果により、入院中の亜急性期脳卒中患者の身体活動量増加を促す方策の一つとして、疲労感を管理することが必要となる可能性を示した。今後は介入研究を行い、疲労感を管理する方法を検討する必要がある。また、入院中の疲労感を管理することが、身体活動量や将来的な身体機能にどのような影響を与えるかについても検証していきたい、と研究グループは述べている。

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