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アレルギー反応に関わるIgE抗体、血中濃度が維持される仕組みを明らかに-東京理科大

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2023年04月05日 AM11:26

IgE産生形質細胞の寿命は短いのに、血中にIgE自然抗体を長期維持する人がいる理由は?

東京理科大学は3月31日、アレルギー反応に関与するタンパク質「免疫グロブリンE(IgE)」について、血中IgE濃度が高く維持される遺伝子改変マウスを用いて、その産生メカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大生命科学研究科の天野峻輔氏(博士後期課程3年)、生命科学研究科・生命医科学研究所の北村大介教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Immunology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

抗体の構造は、抗原に結合する「可変部」とそれを支える「定常部」に分けられ、定常部の種類によってIgE、IgM、IgGなどいくつかの種類(クラス)に分類される。抗原が侵入した際、最初につくられる抗体はIgM型であり、その後、定常部遺伝子に組換えが起こって、定常部の構造だけが異なるIgG型やIgE型の抗体が産生されるようになる(クラススイッチ)。

抗体を産生するのは白血球の一種であるB細胞である。骨髄より生じたナイーブB細胞は、抗原に遭遇すると活性化されて増殖し、Th2細胞などからの刺激を受けてクラススイッチを起こし、低親和性の抗体を産生する「短寿命形質細胞(short-lived plasma cell:SLPC)」に分化する。活性化されたB細胞の一部は、増殖して「胚中心」を形成する。胚中心のB細胞は体細胞超突然変異を経た後、高親和性の抗体を産生する「長寿命形質細胞(long-lived plasma cell:LLPC)」や、再度の抗原侵入時に速やかに大量の抗体を産生する「」に分化する。

IgEは血液中に存在する抗体であり、体内に侵入した花粉やイエダニなどのアレルゲンに結合すると、各種アレルギー反応を引き起こす。IgEの半減期は1〜2日と短く、IgEを産生する形質細胞は寿命が短いため、通常であれば血液中にIgEはほとんど検出されない。研究グループは、以前の研究において正常なマウスではIgEを産生するB細胞の寿命が短く、IgE型記憶B細胞が産生されないメカニズムがあることを明らかにしていた。一方、アレルギー疾患を持つ人では、IgE自然抗体が長期にわたり高い濃度で血中に維持されることが知られており、どうしてそれが可能なのか、その理由は解明されていなかった。

継続的なIgEの産生にはIgG型記憶B細胞から分化したIgE型SLPCが関与

まず、血中IgE濃度が高く維持される遺伝子改変(MyD88欠損)マウスを用いて、IgE自然抗体の産生メカニズムを調べた。MyD88欠損(−/−)マウスの血清IgE濃度を調べたところ、生後2週齢から血清IgE濃度が上昇し始め、4週齢でピークに達し、その後高い濃度で維持された。一方、MyD88+/+およびMyd88+/−マウスでは血清IgE濃度は低く維持された。

薬剤処理により形質細胞を枯渇させたところ、血清IgE濃度が一時的に低下したが、その後2週以内に元のレベルまで回復した。また、抗体投与によりB細胞および記憶B細胞を除去したところ、ナイーブB細胞は投与後7週以内に半数まで回復したにもかかわらず、血清IgE濃度は9週まで回復しなかった。これより、IgE産生には長寿命のLLPCではなく短寿命のSLPCが、そしてナイーブB細胞ではなく記憶B細胞が関与することが示唆された。

また、MyD88−/−マウスでは、MyD88+/−マウスに比べ、IgG1を発現する記憶B細胞の分画が増加していた。そして、抗体可変部領域の遺伝子レパートリーを調べると、IgE型形質細胞は、IgG1型またはIgG2型記憶B細胞と配列を共有していた。これらの結果から、MyD88欠損マウスにおける継続的な高い血清IgE濃度には、IgG型記憶B細胞から分化したIgE型SLPCが関与することが示唆された。

肺のレンサ球菌種が免疫反応を引き起こしIgE自然抗体の産生を誘発

MyD88−/−マウスの肺細菌叢を調べると、レンサ球菌であるS. aziziiが異常増殖していた。また、MyD88−/−マウスから得たIgE型抗体はS. aziziiに結合した。さらに、抗生物質投与により共生細菌を枯渇させた後、S. aziziiを感染させると、血清IgE濃度がMyD88−/−では有意に増加したが、MyD88+/+マウスでは変化しなかった。これらの結果から、MyD88欠損によりマウスの肺の細菌叢が変化し、S. aziziiなどのレンサ球菌種が免疫反応を引き起こしてIgE自然抗体の産生を誘発させたと考えられる。

肺の非造血細胞で過剰発現するCSF1、樹状細胞の活性化を介しTh2型免疫応答を誘導

MyD88−/−マウスでは、CD4+T細胞のうちTh2細胞の数と頻度が増加していた。また、肺の非造血細胞(上皮細胞)における各種サイトカインの発現を解析したところ、CSF1の発現レベルが顕著に増加していた。さらに、MyD88−/−マウスでは、CSF1受容体を発現した従来型2型樹状細胞(cDC2)が増加していた。これらの結果から、MyD88欠損マウスにおいては、肺の非造血細胞においてCSF1が過剰発現しており、これが樹状細胞の活性化を介してTh2型免疫応答を誘導し、IgE自然抗体の産生を促進すると考えられた。

研究成果について研究グループは「本研究により、IgE自然抗体を長期に供給する記憶B細胞や、またその記憶B細胞の抗体産生細胞への分化を誘導するTh2細胞を標的とした、IgE自然抗体の産生を阻止する新たなアレルギーの予防方法が見つかるかもしれない」と、述べている。

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