92.7万人対象、食事の状況・喫煙・運動・睡眠の質など生活習慣のデータを解析
奈良県立医科大学は9月9日、朝食抜きおよび遅い夕食の習慣が、それぞれ骨粗鬆症性骨折リスクの上昇と関連することを初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大糖尿病・内分泌内科学講座の中島拓紀助教、高橋裕教授、公衆衛生学講座の西岡祐一助教、今村知明教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the Endocrine Society」に掲載されている。

これまでに、骨粗鬆症による骨折リスクは、運動・飲酒・喫煙などの生活習慣と密接に関連していることが知られている。一方で、朝食を抜くことや夕食を遅い時間に摂るなどの食習慣との関連については、ほとんど明らかにされていなかった。
そこで今回の研究では、健診データと連結された日本の大規模レセプトデータベース(DeSCデータベース)に含まれる1100万人分のデータを用いて、朝食抜きと遅い夕食の食習慣を含むさまざまな生活習慣と、骨粗鬆症性骨折の関連を解析した。2014~2022年の間に健康診断を受診した、骨粗鬆症の既往がない20歳以上の人を対象に解析を行った。食習慣に関する情報は、健康診断時の問診票から、朝食抜き(週3回以上朝食を抜いた)および遅い夕食(週3回以上、就寝2時間以内に夕食を摂る)と定義した。これらに加え、喫煙・運動・睡眠の質などの生活習慣に関するデータと併せて解析した。アウトカムはレセプトデータに基づき、骨粗鬆症性骨折(大腿骨・橈骨遠位端・脊椎・上腕骨の骨折)の診断とした。統計解析には、COX比例ハザードモデルを用いて既知の因子を調整し、骨折リスクを計算した。結果は計92万7,130人が対象となり、追跡期間の中央値は2.6年であった。
骨折リスク、朝食抜き+遅い夕食習慣23%増、喫煙11%増、運動習慣なし9%増など
他の生活習慣と独立した骨粗鬆症性骨折リスクの調整ハザード比(aHR)は、それぞれ朝食抜きが18%増加(aHR 1.18(95%信頼区間(CI)1.12-1.23))、遅い夕食が8%増加(aHR 1.08(1.04-1.12))していた。さらに朝食抜きと遅い夕食習慣を併せ持つ人は、骨折リスクが23%増加(aHR 1.23(1.13-1.34))と、相加的にリスクが増加するという大きな影響が認められた。
その他の生活習慣による骨折リスクは、喫煙が11%増加(aHR 1.11(1.06-1.17))、運動習慣なしが9%増加(aHR 1.09(1.06-1.11))、不十分な睡眠が5%増加(aHR 1.05(1.02-1.07))と関連していた。また、朝食抜きと遅い夕食の習慣を併せ持つ人は、喫煙・運動習慣なし・不十分な睡眠などの不健康な生活習慣と重複が認められた。
これらの結果から、骨粗鬆症は生活習慣病の一つであり、その予防には食習慣を含む悪い生活習慣を一つでも減らすような総合的な生活習慣の見直しが、骨折予防につながることが示唆される、と研究グループは述べている。
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・奈良県立医科大学 プレスリリース


